実力を伸ばす

1. 目標の上書きをする
2. ポテンシャルのバージョンアップをする
3. Must ではなくLets の気持ちで
4. 経験をする
5. 自立から自律

開花したらその才能を実力として定着させるための作業を始めます。

私の考えでは、才能はその選手が持っているポテンシャルが最高のレベルで形になった物。実力とはどの様な条件であっても才能の90%以上のパフォーマンスを常に発揮できる事をさします。したがって実力を定着させるために正しいパフォーマンス(練習)を継続的に行う必要があります。そこで間違いを起こし実力を定着させる事ができない選手が多くいます。

実力を定着させるために必要な事は上記の五点です。では、順を追って説明していきましょう。

目標の上書き

目標の上書きをする

選手が強くなる過程で目標を上書きする事を無意識のうちにやっていると思います。

これは中学校時代では試合の度に自己記録が伸びるという経験をする選手が多くいます
が4月には13秒0だった自己記録が8月には12秒3になっていた。
この様な事がよく起こります。
これは目標の上書きが自分の意思とは関係無くできている状態です。

しかし、記録や目標のレベルが上がるにつれて自然と目標が上書きできる様な簡単な状況
ではなくなります。これは自身のレベルが上がっている事ですが、ポテンシャルの上限
(壁)が近づいている事にもなります。

思う様に記録が伸びなくなった時が本当の成長段階に入ったと考えて良いでしょう。この段階では意識的に目標の上書きをする必要があります。

ポテンシャルのバージョンアップ

ポテンシャルのバージョンアップをする

目標が上書きされた場合、必ずポテンシャルのバージョンアップを行います。下図は解りやすく説明したものです。

目標
100m 12秒8

上書きされた目標
100m 12秒5

理由
県大会に出たいと思うようになり(目的の向上)その為に最低限必要な記録を目標とする。

この様な時にポテンシャルのバージョンアップが必要です。これは、今現在のポテンシャルでは12秒5の記録を出すことが不可能です。

したがって12秒5を出す事ができるポテンシャルをてに入れなければ12秒5の目標はそれこそ絵に描いた餅です。では、どうすれば良いかを説明していきましょう。

毎日の練習でポテンシャルのバージョンアップを行う

  1. 主練習の準備運動

    主練習の準備運動

    ① wup 軽いランニング
    ②柔軟性を高めるストレッチ
    ③基本の動の反復ドリル

  2. 主練習

    主練習

    ・走練習
    ※それぞれの選手の目的に合った練習スケジュールで行います。

  3. 主練習後の補強運動

    主練習後の補強運動

    ④筋力を高める補強
    ⑤体幹を高める補強
    ⑥Dwn 軽いジョギング
    ⑦筋肉を緩めるストレッチ

例:目標(1)100m12秒8を点数で評価→(2)12秒5に目標を上書きに必要な値

種別 具体的な評価 点数 気づいたこと
ある程度は満足できる値はある 10 現状を維持しつつも向上させる努力も必要。
力みがあり正確性には欠ける 7 リラックスしながらも正確なフォームを身に付ける事が不可欠。その為にも筋力をつけたい。
上半身の筋力が下半身に比べ弱い 8 上半身が弱いため、後半腕振りに力みが見られバランスを崩し
ある程度は満足できる値はある 10 現状を維持しつつも向上させる努力も必要。内転筋が弱い。フォームが安定しないことも,後半減速する事も内転筋の筋力不足が原因
後半、フォームがぶれないためにも必要 5 内転筋が弱い。フォームが安定しないことも,後半減速する事も内転筋の筋力不足が原因
ある程度は満足できる値はある 10 現状を維持しつつも向上させる努力も必要。
合計 目標を上書きするために必要なポテンシャルに対する現在のポテンシャル 50 / 60

目標(1)を目標(2)に上書きするのに必要なポテンシャル数値は「60」になります。

しかし、現在のポテンシャル数値は50です。

足らない要素を底上げしなければ目標(2)を設定する事はしない方が良いと思います。
簡単な例えで言えば、50ℓの容器に60ℓの容器は壊れます。
ではどの様にしてポテンシャルの底上げをすれば良いでしょうか。それは主練習をはさんで行う準備運動と補強運動の質を上げる事です。

では具体的にその方法を説明しますが、陸上競技には矛盾する要素があります。
この要素についても説明しますが上図を参考に底上げする要素を整理してみましょう。

上図からこの3つの要素を重点的に底上げする必要が見えて見ます。ここで目標を設定します。

例として④の底上げのために腕立て伏せや鉄棒を補強とします。
例えば、今,腕立て伏せが100回できる。これを150回にする。確かに50回多くできる様になったと評価は出来ますが、私の考えでは回数よりも時間を重要視しています。60秒間に腕立伏せてが67回できた選手が69回できた。こちらの方が重要です。同じ選手が60秒間に64回になった。一見,後退した様な印象ですが正確に正しい動作をする事で回数は落ちたが正確性は上がった。

この様な判断を指導者は行わなければなりません。

Must ではなくLets の気持ちで

Must ではなくLets の気持ちで

目標を上書きし、ポテンシャルのバージョンアップをしていく中で問題が生じます。それは、先程書いた様に矛盾とどう向き合うかという事です。

しかし、本当の実力を身につけた選手であれば,正確で高い筋力を使う事を覚えると簡単にこの矛盾を克服する事ができます。

その為に一番有効的な方向性は練習を決してMUST(~しなくてはいけない)ではなくLETS(~しよう)という方向性で臨むべきだと考えます。その為に具体的にやるべき事は、正確性を求めるか、速さを求めるかの判断と決定を選手に任せることだと思います。これには選手に練習の意味を強く理解させ、練習の質を上げる効果があると考えるからです。

やはり、人が決めた事よりも自分で判断し決めた事の方がより良い結果に繋がると信じるからです。

経験をする

経験をする

①成功の経験をする
②失敗の経験をする
③経験から自分の引き出しを増やす

危険をするとは失敗から反省を活かし未来に活用する事と思っている方は多いと思います。これでは経験を未来に活かす事はできません。

まず反省とは何かを考える必要があります。学生時代に反省文なる物を書かされた経験がある方は多いと思いますが、多くの場合、同じ失敗はしませんといった内容が多くあります。同じ失敗はしないという事は言い方を変えれば同じチャレンジはしません。になります。

しかし,このチャレンジは無医務なものだったのでしょうか。そうでないと思ったならやるべき事は反省ではなく分析です。そして反省は失敗の時にだけ行う。この様な習慣は有りませんか。経験をするとは成功のわけ。失敗の理由を分析し、成功の実例、失敗の実例を多く集め自分の引き出しを増やす事だと思います。引き出しの多さは困難な状況においてどう対処すればより良い方向へ進路をとる事ができるかの羅針盤の様な物です。正確な羅針盤をてにイ列ためにも経験は必要ですが、昨今、無断な経験、失敗するかもしれない経験を避ける傾向が有るように感じます。本人が判断してのことであれば良いとは思いますが、指導的立場の人間が、無駄である。失敗のリスクがあると判断し若い芽を摘んでしまう傾向が有るようにも思います。

また、結果が良かった時には全く分析を行わず結果だけに満足してしまう事も良くないと私は思います。たまたまかもしれない成功もあるはずです。

 

  1. ①成功の経験をする
    ①成功の経験をする

    成功の道筋を知ると同時に、失敗したかもしれない可能性を分析する

  2. ②失敗の経験をする
    ②失敗の経験をする

    失敗の道筋を知ると同時に、成功する為に必要な道筋を分析する

  3. ③経験から自分の引き出しを増やす
    ③経験から自分の引き出しを増やす

    科学者が真理にたどり着く方法は多くの実験を繰り返すことです。実験は失敗はつきものです。

     

しかし、自分自身の人生というプラットホームでは失敗はネガティブな事です。ネガティブが不平、不満にならない自己コントロールの技術を身につけましょう。

 

自立から自律

自立から自律

私の指導においては、選手に課題を与え、その課題を克服するための工夫をしてもらいます。

課題が終了した場合、新しい課題が見つかればその課題に挑み、また目標を上書きするという作業を続け、少しずつ階段を登る様にバージョンアップしていく方法をとります。

その時に目に見える技術的なポテンシャルだけでなく、目に見えない精神的なポテンシャルや個々の状態を注意深く観察します。この様な作業の繰り返しで選手が自分で判断、決断し練習ができる様になって欲しいと願っています。これが自立から自律への方針になります。

そして自律した選手は放っておいても強くなります。指導者の役割とは選手にメニューを与え管理しながら強くするのではなく選手に課題を与え選手が自主的に課題を解決し自己の能力を向上する事の補助をする存在でなくてはならないと考えます。極論にはなりますが強くなる,ならないの判断は指導者がするのではなく選手本人がすべきと思います。

ですから指導者が選手に行う事は常に正しい判断ができ自律した個性を育てる事。この様に思います。

 

変動するもの,不動のもの

(10年後の未来を見据える)

変動するもの,不動のもの (10年後の未来を見据える)

冒頭にも書きましたが,このメソッドは邪道かもしれません。

直接的な速く走れる方法ではなく、速く走れる人はどう作るかの方法を書いている様な物です。例えるならば建物を建てようとした時、建物の建て方よりの土台の作り方を重要視し、土台が出来たら後は皆さん自由にどうぞ、といった印象を受ける方もいます。


さて、今は邪道かもしれませんが、10年後には邪道ではなく常識になっているかもしれません。価値観は変化し、常識も変わっていく今の時代、不動であるものを土台にし、変動するものに柔軟に対応する。これが成功するために必要な選択であると思います。

変動していく現代で興味深いものに「学校の「当たり前を」やめた」という著書が有ります。

現役の公立中学校校長の工藤勇一先生が書いたもので学校にはあって当たり前のものでも目的にあっていなければ形骸化したものは排除しても良いという考え方です。私が興味深く思ったのは、私自身も目的を最優先した考え方をします。どういう事かといえばやり方(マニュアル)を優先するのではなく、目的から逆算し、指導する選手をどう活かせば良いかで方法を決める。この方法は個人によって違うべきであり、指導者が一流のアスリートになるポテンシャルを見いだしても、本人が楽しさを優先するならば、楽しく運動できる場を作る必要があると考えます。
反面、不動であると考えるものは、最終的な判断と決断は選手が行う。という事です。言い換えるならば、自律した選手を作ることが間違った判断をしない。という事になると考えます。

自分で考え、自分で判断、決断する。この過程が成功のピラミッドにおける「葛藤域」と考えます。

最近、爆発的に売れた著書に「君たちはどう生きるか」という漫画が有りますが、あの本は著者の吉野源三郎氏が何も考えず戦争に突き進む「日本」に対し児童書という形を借りた警鐘と私は思います。この本で著者が言いたい事は「自分の頭で良く考え、自分で正しいと思う判断をしろ」と思います。

ベイサイドアスレチッククラブは、この様な自律した人間を育てる事を目的とするクラブです。