子育てのヒント
2023年02月22日

食事と昼寝 1

 前回、悪い状態はどのような時に起きるか,その見分け方や対処方法について書きました。本来は陸上競技クラブの指導をするメソッドを解説するためにブログにエピソードとして紹介していこうと始めたブログですが、保育園経営で得たノウハウを活かし作り出したメソッドでもあります。そこで競技力を向上させる目的だけでなく、子育てのヒントとなる内容は「子育てのヒント」というカテゴリーで書いていこうと思います。

 食事と昼寝 1

 保育園では、入園直後は、慣らし保育を行います。個人差はありますが大体は1週間程度の期間で行います。最初は1時間程度から少しずつ時間を増やし、1週間後には昼寝ができる事を目標にし少しずつ保育園の生活に慣れさせていきます。
 中には、初日の1時間を何も問題もなく過ごし、次の日から8時間を問題なく過ごしてしまう豪傑もいましたが、慣らし保育が終了しても保育園の生活に順応できない子供もいます。親御さんに時間的余裕がある場合は慣らし保育の時間を延長する事もあります。  今回の例は、B(2歳児)外国の子です。本人は日本語は解りません。親御さんは日本語は話す事はできますが家での会話は全て母国語で行います。したがって親と子供の会話も母国語になります。1週間の慣らし保育が終わった段階でも昼食が難しい状態でしたが仕事の関係で通常(8:00~17:45頃)の保育に入る事になりました。予想通り昼食が時間どおり食べ終わらない。座っていることもできない。昼寝の時間になり布団に寝かせると暴れる。暴れ方が尋常でないため他の園児に与える影響も多くなります。
 この時思い出したのが以前同じ様な「悪い状態」になったAの存在です。まず子供の様子を観察しBが悪い状態になっている原因を探します。一度経験していることなのでBが悪い状態であること。どうすれば原因を取り除く事ができるか。この様な考え方に行き着く事は容易にできました。また日本人でないということも大きなヒントになりました。まずは母国の事情や習慣なども配慮する必要があります。そこで悪い状態になっている原因の仮説を立てます

1.仮説
(1)食事のリズムが違う
(2)他の子どもとのコミュニケーションが苦手(国籍よりも個人の性格から)
(3)異常に不器用
以上の事から次のような仮説をたてました。

家での食事は時間は決められていないのではないか。また異常に不器用なため他の園児よりも多くの時間が必要であるが時間が来れば昼寝をしなければならない。最後まで食べられない、自分の思うように食事ができない。知らない人と一緒にいるストレスも大きい。
家では好きなときに寝ている様で昼寝の習慣もない。これらの条件がBのストレスとなり悪い状態にしている。このように仮説を立てました。

2,対策
次に具体的な対策を実行します。以下のその実行した内容です。
 ①テーブルは他の子どもと離し一人用のテーブルにする。
 ②他の子供達とは距離をとり他の子供達が視界に入らない様に壁に向いて食事させる。
 ③時間を気にせず終わるまで(本人が終わり)と意思表示するまで食べさせる。
 ④食事中の行儀の悪さは注意しない。
 ⑤食事中の立ち歩きは認めない。
 ⑥食事中も昼寝の時間になったら消灯する。
 ⑦昼寝はB彼の意思に任せる。大きな声を出す、暴れる、たち歩く事は認めない。
※外遊びや散歩で沢山歩いた時など、食べている姿勢のまま寝ている事もありましたが  布団で眠るかその状態でいるかの判断はBにさせる。
 ⑧自分で寝たいと思った時に布団に入る。

3,経過
 上記の事柄をスタッフと打ち合わせし私がBの担当をすることになります。最初に効果が出たのは昼寝でした。このパターンを始めて2日目にBの食事に終わった段階で「次、どうするか」と訪ねました。言葉は通じないので目配せと手の合図でみんなが寝ている方を指さし、「どうする」というサインを送ります。当然、食べるパースが遅いので他の園児たち昼寝をしています。私の周りも薄暗くその中での食事です。最後まで食事ができたので気分も良かったのでしょう。素直に布団を指さし「行く」の意思表示がありました。手振りで暴れるまねをして×を作り、これはだめだぞという意思を伝えます。Bもそれにも解ったといった意思表示をし、布団に入り暴れる事もなく昼寝をする事ができました。

4,課題
このエピソードの課題はいつまでもBのリズムでの生活を続ける事はBにとっても良い事ではありません。どこかで他の園児と同じ様な生活にする必要があります。そのタイミングを上手に計らなければ元に戻ってしまう危険性があります。またBの生活のリズムを他の園児と同じ様にする為にはBの食事のスピードを上げなくてはなりません。入園当初よりは座って食事はできる様になってきてはいますが他の園児の4倍ほど時間がかかります。また「特別な扱い」に対する違和感を感じるといった事も配慮する必要はあるでしょう。次回は取組中の起きたアクシデントとそこから得られたヒントについて解説します。