松尾メソッド
2023年03月26日

課題とは何か

 方法論よりも目的論で考える2

 前回は葛藤について書きました。葛藤には課題が必要です。課題は自分に不足している事や少し頑張ればできる目標を達成するために行う事です。しかし、この課題を自分で見つける事は意外と難しく経験が必要になります。目標を見つける事は誰でもできますが課題を見つけ具体的にどう行動すれば目標を達成できるかの方法を選手が見つけるには経験が必要です。この時に選手の援助する事が指導者の一番大切な役割と思います。
 しかし日本では指導者が問題を解決する為の方法を教えることを重視します。学校教育の現場でも初めから答えがあり、答えの解き方を教ます。その様なやり方を体系的にまとめたものをマニュアルと言ったりもします。競技指導の現場でもこうあるべきという考え方で選手を縛る指導者はいます。しかしその方法が万人に当てはまると考えづらいと思いませんか。自分に合っているのか、そもそも自分の意思で目標を決めているのか。この様な疑問もわいてきます。そこで大切なことが目的になります。自分がその目標を持つ目的を明確にし、目的にあった課題を用意する。最初は指導的立場の人間が用意してあげてもいいでしょう。そして、自分で自分にあった課題を見つけられるように訓練し、自分で課題を見つける事ができる様になれば自然と自分の目的にそった課題を見つけることができる様になります。これを自立といい自律に繋がる階段への第一歩になります。

課題とは何か

1,課題について
 課題とは今の自分には不足している事、もう少し頑張れば目標が達成できそうな時にやるべき事です。ですから今現在に満足している。到底無理と感じている場合は課題にはなりません。新しい課題を作るうえで重要なことは目標を常にバージョンアップし続ける必要があります。新しい目標を作り続けるためには精神的なポテンシャルは不可欠な要素であるため、課題を上書きすることと精神的なポテンシャルを高める事は同時に行われているはずです。これは勉強や仕事にも共通する事柄です。ではどの様にして子どもや選手の目的意識を刺激して課題を与えていくかを説明します。

2,課題と目的の関係
(1)本人の目的意にそって課題は成長する
①楽しい気持ちが練習に参加する動機・・・・・・楽しく活動するために君はどうする。

子どもは楽しそうだからやってみようにからスタートします。この段階ではより楽しくする為に君は何を頑張るかを課題にすべきです。この時の子どもの発想はその子どもの特性により様々な課題がでるでしょう。以下は子どもの特性による課題を予想してみました。
1 友達と仲良く活動する・・クラブに自分の居場所を見つけたり友達を作ることが目的
2 時間を守り道具を大切にする・きっちりとした規律が心地良いと感じる子どもの目的
3 もっと記録を伸ばした・・競技で自分の能力を高め良い記録、良い結果を求める目的
ポイント
スタートは楽しく活動しようですが1ヶ月足らずでそれぞれの子どもの目的は以上の3つの目的に分類されます。3つの目的は全ての子どもが持っていますが、よりどの目的が強く表れるかでクラブに参加する子ども動機は2つの方向性に分かれると考えます。

②本人が練習に何を期待(目的)としているかを確認する 

この段階では競技志向と仲間と楽しく活動志向に分かれます。同然2つの志向が100対0ということにはなりませんがどちらかの志向が強く出てきます。競技志向であっても純粋に陸上競技の記録や大会を意識した選手から他の競技に活かす。体力をつけるなど細かく分かれるでしょう。当然楽しく活動志向においても目的は細分化されていきます。

③本人がステップアップしたいと思う動機を用意する

まず選手として今の自分をステップアップしたいと感じているかを把握します。そこで今の自分よりも少しだけ進歩した自分のイメージを作ります。そのイメージが目標になります。その目標を達成するためにやるべきことが課題になります。目標については子どもに任せ課題については指導者が支援します。この様にしてプラスのスパイラルを作ります。注意すべきは楽しく活動志向の子どもに対しても競技力の向上を期待した活動はします。但し本人の意思か周りに同調せざる雰囲気の中での活動かを見守る姿勢は指導はは持っておかなければなりません。
(ポイント)
競技力の向上を目的とする場合、この段階から身体的ポテンシャルと選手個々の目標があっているかを見極めます。目標を達成するためには目標達成を上回る身体的ポテンシャルを保持しておく必要があるためこの場合の課題はいかに身体的ポテンシャルを上げるかになります。

④課題を解決することで得られる充実感から課題を自分で見つけ解決する面白さを教える

自立への準備→自律した人間性の確立

(2)課題と葛藤
「本人の目的意にそって課題は成長する」段階では課題は頑張れば達成できる目標になります。前回提案した葛藤とは何かの図でいえば①②ローポジティブから③ハイポジティブの段階になります。課題を克服する楽しさを味わえる段階です。勿論この段階での個人差や目的によって課題も多彩さを出し始めます。指導者は型にはめることなく選手の求める目標にそった課題を与え(自分で見つけられる)様に導き課題解決のヒントを与えます。この時に本当の意味での葛藤の域に入り課題をひとつ解決する度に自身のポテンシャルを上げ成長を続けることになります。その仕組みを表したものが成功のピラミッドになります。

 成功のピラミッド

(3)課題の方向性の確立
 上図の「葛藤の域」での課題は成長に不可欠なものです。この時の課題で指導者が配慮すべき事は選手として記録の向上や競技会で良い成績を収めることを目的とした課題は尊いもので自分の限界を感じ競技力向上以外に目的をを見つけた選手が敗北者であるといった決めつけをしない事です。競技者として上を目指すが目的であれ、運動を楽しもうが目的であれ、その経験が将来の自分にとってプラスになる様な活動ができる。また指導する必要があります。選手として活動できる年数よりもその後の人生の方がはるかに長いという事です。競技力の向上よりも後の人生において役に立つ葛藤のあり方が正しい葛藤の方向性と思います。

(4)葛藤の正しい理解
 高い目標を持ち、その目標を達成しようとするのであれば葛藤は必要不可欠です。しかし目的が、前回提案の「葛藤は何かにおける」①②ローポジティブの状態から動かない場合も多くあります。私の私見ですが、クラブに遊びに来る。友達に会うという目的だけでの参加でも全然良いと思います。他の選手の邪魔にならなければ個人の目的は尊重されなくてはなりません。指導者は「楽しい活動」の意味を選手がはき違えないように配慮しつつ、楽しい活動を支援する課題と成長を保証するべきだと考えます。そして「楽しい」からから「面白い」といった変化があった時指導者は、遊びに来る目的にもう一つ新たな目的を持てる様に導くことが大切です。例えば頑張っている仲間を応援する。記録をとったり選手のフォローをする。この様なことが自発的に行える様になった時、自立への一歩を踏み出した瞬間といえるでしょう。競技力が高い選手だけを尊重し、競技力に劣る選手の居場所がなくなる様なチームであってはならないと考えます。