松尾メソッド
2023年07月20日

戦術

 戦術

1,戦術とは何か
 今回は戦術の話です。そこで戦略と戦術の違いは、戦略は戦術が優位に使える様に準備をすること。戦術は準備できたものを有効に使い良い結果を得るための戦い方と考えて下さい。この様ににも考えることもできます。戦略は試合当日に向けて使える武器を沢山獲得するための行動。あるいは道筋です。そこで武器とは何かを考えます。
 ①誰よりも速いスタート技術
 ②スムージに加速できる能力
 ③スピードを維持して走ることができる中間走
 ④最後に伸びのあるラスト
 ⑤誰にも負けないという自信
 ⑥最高のコンデション。
 これが陸上競技の武器になります。ここからは身も蓋もない話ですが、陸上競技は準備でほぼ結果が決ります。それでは戦術の意味は無いのではと考えますがそれは早計です。先にあげた武器の①~⑥を上手に使いこなす。これが戦術です。これができなければ折角準備した物が無駄になります。そこで解りやすく戦略と戦術を公式で考えたうえ数値化してみましょう。以下がその数値化の例です。

 結果=才能+戦略(ポテンシャル+コンデション)×戦術

もし戦術といものが無ければ優れた才能を持った選手が失敗のない練習スケジュールを消化できた場合自ずと順番は決まります。これも実際の数字を入れて解りやすく解説しましょう。

(例1)
A 才能(65)④ +戦略(P75(10) ② +C75  ③ =150 ③
B 才能(70)② +戦略(P70(  0) ④ +C65  ④ =135 ④
C 才能(60)⑤ +戦略(P75(15) ① +C80  ② =155 ②
D 才能(70)② +戦略(P75(  5) ③ +C85  ① =160 ①
E 才能(75)① +戦略(P75(  0) ④ +C55  ⑤ =130 ⑤
 
説明
 P(ポテンシャル) C(コンデション)の試合時点の数値を表す。才能は4月新入生として入部した段階の選手個々のポテンシャルと考えます。+戦略以降がそれぞれの学校、クラブで行った練習の質、内容ででの伸び率。4月段階での順位は1位E、2位B、D、4位A、5位Cとなります。この後の+戦略のP(ポテンシャル)は身体的ポテンシャルが練習によってどれだけ伸びたかを示したものです。試合時点を6月と仮定した場合一番伸びているのはCの15p続いてA10pとなり練習の内容ではCとAが比較的良い内容の練習だったといえます。続いてC(コンデション)を試合に向けて合わせることができたかを数値でみるとコンデションを最も合わせることができたのがDの85p、続いてCの80pとなります。この戦略以降の数字(P+C)を数値化したものが右端の数字になります。この時の試合前の実力は1位D160p~5位E130pとなります。
 戦略とは入学当初のポテンシャルを2ヶ月間でどれだけ伸ばし、試合にむけてのコンデションを合わせることを計画的に行い結果として成功と収める行程をいいます。陸上競技の場合この行程で当日の結果の90%は決まると言っていいでしょう。そこに最終の結果を左右する要素があります。それが戦術です。そこで戦略までの行程表(例1)に最後の戦術を掛けて最終の順位をつけてみましょう。それが以下のの表になります。

2,結果に戦術が関わる割合と要素
 戦術が試合に影響を及ぼす影響を考えてみます。最初の才能だけでの試合結果ば以下の様になります。才能の値、E(75)~C(60)の順番になります。この後の2ヶ月の練習の結果は1位D150p~5位E130pの順番いなります。Dは3位から1位に浮上しEは1位から最下位の5位に落ちています。この事から戦略的に成功はD。失敗はEと考えられます。これに最後の戦術(試合当日)を掛け合わせた結果が(例2)になります。

(例2)
A 才能(65)④+戦略(P75(10) ② +C75③ =150③ ×0,80 ④ =120,0 ④
B 才能(70)②+戦略(P70(  0) ④ +C65④ =135④ ×0,85 ③ =114,8 ⑤
C 才能(60)⑤+戦略(P75(15) ① +C80② =155② ×0,90 ② =139.5 ①
D 才能(70)②+戦略(P75(5) ③ +C85① =160① ×0,80 ④ =128.8 ②
E 才能(75)①+戦略(P75(0) ④ +C55⑤ =130⑤ ×0,95 ① =123.5 ③

説明
 例2は試合終了時の順位(結果)を表したものです(右端)スタート前の仕上がり度順位の1位、2位が逆転し5位だったEが3位に上がっています。これは戦術がD0.80Pに対しCが0.90Pと高い数値を出してたため結果の逆転が起きたからです。これはCがDよりの上手に戦った結果といえるでしょう。結果的に一番上手に戦ったのはEです。Eは練習の過程では失敗と考えて良いと思いますが試合の当日の戦い方は今の自分のポテンシャルとコンデションの悪さを上手に克服しています。スタート前時点でのポテンシャルとコンデションはD(160P)~E(130P)の順位ですが、戦術だけに限ったポイントでは1位E(0.95)~4位AとD(0.80)の順になります。実力に大きな差がある場合はスター時のポテンシャルとコンデションでほぼ決まりますが力が拮抗した場合には戦術が最終的な結果に及ぼす影響は大きいと考えるべきです。

3,戦術の正しい考え方
(1)戦略は足し算、戦術は引き算で考える
 この考え方は私見ですが戦略とは入学時のポテンシャルを工夫し上げていく作業と試合に向けてコンデションションを上げていく作業を計画的に行うことです。違う解釈をすれば、試合に向けてコンデションも含め使える武器を増やす作業で足し算と考えます。戦術は試合当日の結果から自分の実力を何%を有効に使えたか。あるいは使える様な方法を用いていたかで判断します。戦術は結果で判断しますので、スタート前、今日は80%で行こうと決める事ではありません。従って一流選手の多くがインタビューの際に課題を多く話すことは結果(順位)は満足するが経過(戦術を活かして戦ったか)には若干の後悔が残る。この様な考えがあるのでしょう。そこで順位を分けたCとD。それと戦術としては高い数値を出したEについて解説をします。

(2)結果を分けた要素(C、D)
 スタート前の実力ではD(160)C(155)で差は5pあります。同じ様な戦い方をすれば当然Dが勝ちます。では何が違ったかを考えてみましょう。これを前出の武器を例えに出すと両者はほぼ同じだけの武器を持っています。そこでCが使えてDが使えなかった武器があったとイメージして下さい。Cは①誰よりも速いスタート技術を使いましたがDはこれを使えませんでした。Dが①誰よりも速いスタート技術を持っていなかったのではありません。使えなかったのです。理由はプレッシャー。戦術とは今持っている力を全て出すこと。その方法を考えることです。CとDの違いはプレッシャーに対しどう対処するかを事前に決め実行したCとその対策がなかったDとの差です。戦術とは試合中起きるであろう成功を阻むであろう要素とどう向かい合い、どう対処するかの技術のことです。
 また、DがCに対しプレッシャ-っを感じた原因にはCの伸び率にも関係があると思います。もし、DがCに対するプレッシャーという余計なことをせずに自分の実力(ポテンシャル)を正確に把握し自分のやるべきことができれば(①誰よりも速いスタート技術)を使えた可能性が高いと思います。その場合結果は違ったものになったと思います。

(2)予想以上の結果を残したE
 Eは5人の中では一番才能がありました。順当に成長していれば1位になっていたでしょう。しかし練習の過程は失敗と言って良いと思います。但し戦術的に高い数値を出し結果3位まで順位を押し上げることができたのは今の自分の実力(ポテンシャル)を理解したうえでできる事に集中した結果と考えます。コンデションが悪いのは練習で怪我があったり、練習ができない状況があったりしたのかも知れません。それを自分なりに工夫する。あるいは支える指導者いるなかで経験値を高めていった可能性があります。この結果は必ず自信に繋がりますので次の試合に期待が持てる結果を得たと考えて良いでしょう。

4,戦術とは
 戦術とは戦略で手に入れた実力を100%上手に使うための方法を考え,実行することです。これも私見ですが戦略では間違った判断をしない事が重要になります。セーフティであることが大切です。しかし、戦術では正しい選択ができるかが試される場と思っています。頭で考えた作戦が良いものであっても実際に行えるとは限りません。やりたいと思っていても実力が伴わない場合のチャレンジは大方失敗といった結果になるでしょう。正しい判断とは先ず失敗するかもしれない不安を払拭し自分の実力を正確に把握することです。そのうえで実力の全てを出し切ること。そのためには、ある程度の慎重さと大胆さを併せ持ったメンタルを獲得しておく必要があります。例えばEの様に自分に無いものは「明らかに見極めて」今の実力でできる事にだけ集中する。その為には自分が持っている武器、持っていない武器の判別を正確に把握し使えると確信できるものは勇気を持って使う。Cの様に格上と思える相手でも臆することなく実力を出し切る。この様なことをまとめて戦略と戦術と考えます。

 後記

 戦略と戦術は大切です。これを知っている。知っていないで結果は変わるでしょう。但し知っていても普段の練習を疎かにしていては使うことはできません。やはり大切なのは泥臭く、コツコツと練習を積み上げるしかないです。で大切な事はワクワクを大事にする。これが一番大事。

 次は戦術の実例をやってみましょうか。

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