子育てのヒント
2024年05月13日

待つこと(コンフォートゾーンから・・・) 

 ベイサイドアスレチッククラブは2023年12月よりクラブのモニター募集を行い、翌年の24年1月より5人の子ども達が参加してくれました。モニターの内容は開始から3ヶ月間は無料で行い、クラブの練習形態、練習内容を検証する場として考えました。応募した子ども達は幼稚園年中から小学2年生までの子ども達です。子ども達の年齢や全くクラブに上級生が居ないこともあり遊びの中に走る要素を沢山入れた内容から入る事にしました。最初から専門的な要素を入れる事は子ども達の興味関心を削いでしまうと考えたからです。その時の練習の様子が下画像です。

  

 

 

 この時の主な活動は遊びです。遊びの中に走る要素を入れる。しかしこの方法では限界があります。それは選手強化としての限界ではなく、子供が飽きてしまうという限界です。子供の興味関心の振れ幅大きいため関心を持って行動を開始するのは早いのですが同時に飽きるのも早いです。そこで陸上競技の特性であるか順位を争うといった要素を加えました。しかし年齢差のある集団なので直ぐに力の優劣がつきます。専門家は現在の実力をみるのではなく潜在的なポテンシャルの高さをみます。その代表的な方が2019年に亡くなった小出義雄監督です。オリンピック、世界選手権の女子マラソンで4個のメダルを獲得した選手を育てています。指導者は選手の潜在的可能性をみて伸ばそうと考えますが子供は「楽しい」「楽しくない」が基準になります。最初は楽しいと感じても飽きてしまえば楽しくない。そこで記録を計るという刺激を加えると最初は興味を示します。しかし直ぐに優劣がついてしまう。常に同じ優劣の中で活動するのは楽しくない。楽しくないという感情は常に順位付けされ序列が決まる来ています。この結果は避けたい。この様な意識が生まれ始めます。この時から子ども達はコンフォートゾーンに入り出します。

 

 何度かブログに書いてきたコンフォートゾーンとは安心の領域のことと考えて下さい。これは日常の平和な空間というイメージです。そこから怖れの領域に出て行くには切っ掛けが必要になります。例えば、アスリート思考がより強い選手は目標や目的が明確でその力によって怖れの領域に出ます。同じ様に企業家であったり冒険家などの人達は平和な日常から目標、目的、憧れ、好奇心、自分が世界で通用するか確かめたい等の願望を使って容易に怖れの領域に入ります。寧ろ彼は怖れの領域で感じるプレッシャーを楽しみます。それは過去に経験した成功体験などがあり、成功を納めるために必要な道筋を経験値として持っているからです。しかし小さい子ども達にとってはその様な経験値がありません。ではどうすれば良いでしょうか。それは怖れの領域を越え学びの領域に入った後の面白さを経験させるしか無いと私は考えます。ではどうやって経験させるかですが小さな成功体験を積み上げて行くとことしか方法はありません。もし他に良い方法があれば教えて下さい。具体的に言えば人間には長所と短所があると言われていますが私はそうは思いません。特徴があるだけです。その特徴が良い方向で発揮されている場合は長所と言い,悪い方向で発揮されている場合に短所になります。その分岐点が子ども達がおかれている環境と考えています。環境には外的な環境と内的な環境が存在します。例えば外的な環境とは子ども達が生活している環境の事です。内的な環境とは子供達の心の中の状態と考えて下さい。そこで先ず外的な環境を変えることにしました。これは、子ども達のお母さんの陸上競技場に行けば意識が変わるかもしれないといった言葉にも後押しされた事もあります。その時の様子が下の動画です。

 まだやらされている感があります。そこで指導の方針を変えます。まだ基本はやらなくても良い。興味がある物に興味を向けよう。それは自分の実力を知る事です。単純に考えるならば記録になります。しかし、ここには大きな問題があります。それは力の優劣がはっきり解ってしまう事への不安が再発するのではないかという事です。この事は公園で行ってきた活動ではっきりと認識されていますので工夫は必要になります。ここで活用するものが特性です。特性には精神的な特性もありますが運動的特性もあります。筋力だけでも持久的能力、瞬発的能力があり自分の得意な距離、得意な状況があります。そこで特性の長所を際立たせる事で記録による優劣だけでない事を気付かせる。そこに興味を向けることを教える。外的環境を変えた後に行うことは内的環境を変えることです。それは、安心の領域である「守り」の姿勢から怖れの領域である「挑戦」へのシフトをスムーズに行うことです。選手、子ども達の反応を観察しながらも休む間もなく課題を投げ続ける。どこで反応するかは解りません。見逃したらチャンスを潰す事になります。何度も見逃し続ければ指導者への信頼は落ちます。もし課題に反応した場合は直ぐに選手、子供の強みを教え、そして子ども達はその強みを自己肯定感と感じることができれば怖れの領域から学びの領域への一歩を踏み出します。
 
 怖れの領域から学びの領域の手前の映像は次になります。

 上の映像はスタージ時に足を素速く裁く練習をしています。下の映像は緩い斜面を使い前半は登りを力強く、後半は下りを利用してスピードを維持する感覚を身につける練習です。佇まいが変わりましたよね。

 後 記

 昨年12月からモニターという名目で募集を開始し今年1月から活動を始めました。一番上の画像がその頃です。一番下の物が今月5月11日の様子です。4ヶ月少しの時間に大変な事もありましたが、トライ&エラーの連続から正解を探しつつやっと形になって来たと思います。大切なことは課題を投げ続け待つことです。我慢ではありません。待つことです。心配な事もあったと思いますが一緒に待って頂いた家族の方には本当に感謝しかありません。