松尾メソッド
2023年06月30日

戦略 目標と目的

 戦略    目標と目的

 陸上競技の練習は指導者によって全くやり方が違うということはあまりありません。同じ練習をしていても指導者によって全く結果違ってくることがあります。これは私の私見ですが、違いは指導者が選手を育てるうえで戦略があるか戦略が無いかの違いだと考えます。選手の指導を戦略的に考える指導者は選手の最終到達地点をゴールと決めゴールに辿り着くために必要なことを確実に行うべきことを解っています。そして選手を確実にゴールに辿り着くことができる選手に育てることを最優先で考えます。解りやすい例えで言えば、戦略的指導をするということはカーナビのついている自動車を運転してると状態と考えて下さい。戦略的でない指導ではカーナビがついていません。地図はあるかもしれません。この違いの例えは地図の読み方を間違えると道に迷ってしまいまがカーナビは一つ一つ丁寧に道を教えてくれます。それ以上に重要なことは事故や渋滞などを事前に知らせてくれるためより安全な道、より快適な道を事前に選択し元のルートを変えることもできます。これはコンデションや日々変わってしまう身体的ポテンシャルに合わせ最適な練習の方向性、メニューを判断し実行することができるということを意味します。戦略で重要なことは3つあります。(1)目標と目的(2)ポテンシャルを正しく判断する(3)コンデションを整えるです。先ずは目標と目的の関係についてお話しましょう。

1,正しい目標を立てる
 来年度の目標を立てる例として二つの例を提示します。一つが適切な例で、もう一つは適切ではありません。その理由を考えて下さい。そこで選手のデータを下記に示します。

(1)選手の情報
①現在の実力  中学2年生 100m11秒3台の記録 県では1~2番手の選手。全国未経験
②時期     中学2年生時の11月後半。来年は全国大会に出場し優勝を目指す。彼の県は強豪県で3年生は毎                               年 全国大会で決勝に残る実力のある選手が複数出る。現在の県での力を考えたならば日本一になる

(2)目標
①100mで日本一の選手になる。
②100mで10秒80の記録を出す。

(3)戦略的な目標
 この目標の立て方で①100mで日本一の選手になるは適切な目標の立て方ではないと考えます。この目標の立て方では目標を戦略的に活用することが難しいからです。目標を立てるとき大切なことは実際目標が達成できるか,できないかを基準で目標を決める必要はありません。希望や夢に近いものでも構わないとは思いますが、最終目標(ゴール)が曖昧な目標では戦略的活用できません。その理由は日本一になるという目標には相手が必ずいます。自分の含めライバルとの相対的な目標設定になるため相手によってはゴールが11秒0になったり10秒6にもなります。しかし10秒8という目標は相手によって動くことはありません。10秒8で走れた時に優勝できるか3位になるかはその年のライバルによって決まり、若干運に影響を受ける場合もありますがしっかりとしたゴールを点で決める事によってゴールに近づくための方法や決断が明確になります。これが戦略的な目標の決め方です。

2,目標と目的を明確にする
目標を決めたらその目標を決めた理由(目的)を明確にします。目的を明確にすることで最初に行うことは目標を細分化し、それぞれの目標に目的を紐付けます。これは今現在の実力と最終目標を線で繋ぎ階段を一歩ずつ着実の登るイメージで目標に近づける。この様に考えて下さい。そして細分化した目標に期限をつけます。下の図がそのイメージしたものです。

 この様にシーズンが終了し,来シーズンに向けての冬季練習が開始されるタイイングで最終目標(大目標)を決めます。そして大目標に向けての中間地点に幾つかの中目標を決めます。これらの目標には必ず期限を決めます。最終目標(大目標)が山の頂上とするならば頂上に登り安全に下山する為には何時までに中間目的地にいなければ山頂からの下山が危険であると考える様に期限までに目標点(中目標)に到達できなければ最終目標(大目標)は無理である。あるいは達成できないと考えるべきです。この時に葛藤の域に入り、最終目標の修正を行う。最終目標に到達するための方法を変えるの2択になります。この時の判断を間違えれば最終目標に到達できないだけでなく今まで順調に登って来た道が気が付けば下っている。この様な結果になる恐れがあります。これは前回の「続けることは間違った選択をしないということ」になります。そこで間違った判断をしないための材料が必要です。それがポテンシャルとコンデションです。

3,ポテンシャルとコンデション
(1)ポテンシャルを上げて小目標を前に進める
 先ず小目標についてせう説明します。ざっくり1年後の目標を大目標(最終目標)そして最終目標を達成するために期限を決め到達していなければならない目標を中目標と考えます。上の図でいえば⑤が大目標になり②~④がそれぞれ中目標になります。この時目標の目的を明確にします。小目標は中目標を達成するために必要な細かい目標を1ヶ月、1週間、1日単位で細かく設定したものです。これを山登りに例えと山頂に登頂し安全に下山する為には何時までに途中の目標点についていなければ日が暮れて危険であると考えることと同様に、来年4月までには②の自己記録を出す目標をクリアーしていなければいけません。12月から始まる冬期練習はポテンシャルを貯める練習です。3月からは貯めたポテンシャルを磨く練習に切り替えます。そこで小目標が重要になります。1ヶ月で上げるポテンシャルを仮に30としたならば、1週間で約7のポテンシャルを上げる計算になります。1日に換算すると約1のポテンシャルが昨日よりも上がっていなければ進歩がないことになります。ポテンシャルには身体的ポテンシャルと精神的ポテンシャルがあります。ポテンシャルが上がるとはできる事が増えると考えて下さい。例えば昨日の50mのタイムが6秒55が今日は6秒53になった。これは身体的ポテンシャルが昨日よりも0秒02速く走ることができた。言い換えれば「できる事が増えた」と考えます。精神的ポテンシャルは昨日より気持ちを集中させることも、リラックスさせることもコントロールできるようとなったと考えて下さい。昨日は練習にプレッシャーを感じ逃げていたかもしれないが今日は挑戦できた。この様に精神的ポテンシャルもバージョンアップを日々繰り返し、1日、1週間、1ヶ月と自分の実力を上げていくことがポテンシャルを上げるということです。これは以前「ポテンシャルを観る」で触れています。しかし順調に伸びていたポテンシャル突然止まってしまう瞬間があります。これが壁にあたる状態ですがこれには理由が二つあると考えます。一つはポテンシャルの限界。もう一つがコンデションの不良によってポテンシャルを引き上げることができなくなった。この二つです。この時に今まで順調に前にすすでいた小目標が足踏みを始め、気が付いたら後退している(坂道を下り始めている)ことになります。この時に間違った判断をする危険性が増し間違った判断をしてしまうと続けることができなくなります。そこで間違った判断をしないための葛藤が必要になります。

(2)ポテンシャルとコンデション
 冬季練習はポテンシャルを貯めるための練習であると話をしました。3月からシーズンに向けポテンシャルを磨く練習に切り替えます。貯めていたポテンシを少しずつ小出しにして磨きます。磨くとは走る技術を高める事と考えて下さい。冬期の蓄えが足らなければシーズン中にポテンシャルの枯渇が起きるためもう一度冬季練習の様なポテンシャルを蓄える練習内容に一時的でも変える必要があります。具体的にはスピードや速い動きではなく走り込みの様な練習になります。二つめはコンデションの乱れによってポテンシャルが破壊された場合です。シーズン当初のけが、体調を崩した状態での過度の練習は冬季練習で貯めていたポテンシャルを壊してしまいます。この時期に最も強いストレス(ハイネガティブ)の状態になり間違った判断をしがちです。この判断ミスはシーズンを通して選手を苦しめることになるでしょう。
 戦略的に練習をするとはポテンシャルを見極め。そのポテンシャルに見合った練習内容ををコンデションと相談しながら間違いなく行うことです。そして最終的に間違った判断をしないように指導、導きことです。

 雑記

 私が中学2年生の時に自分の学校が幽霊部活になりました。自分が幽霊部員になったのではなく部活自体が幽霊状態になりました。この時は楽しかったですね。自分で練習メニューを考え,場所を変え,時間を変え練習しました。この時一番注意したのははコンデションを保つ事です。なぜならコンデションが良い時は間違った判断をしなかからです。コンデションが悪い時ほど不安や焦りが生まれます。コンデションの良し悪しは体調もありますが「楽しい」か「あまり楽しくない」とどちらを感じているかで判断できます。この時今は「あまり楽しくない」感じた時は無理をしている傾向があります。思い切って休む。練習の室を落とす判断が必要ですが以外と勇気が必要な判断です。何度か書きましたがlet’sがmustになった時に無理が始まり、知らずのうちに下り坂を歩いている事になります。

 レベチの話ですが大谷選手が何であれほどの結果を残せるか。それは生活の全てを野球のために考えコンデションをしっかり作っているからです。だから楽しそうなんです。ただ、そんな絶好調の大谷選手もけがでまったく試合に出られない。練習もできない期間を経験しています。それが彼の原動力かも。ちょっと違いますかね。