長く選手を見てきて感じることは強い選手は身体的な優位性よりも精神的優位性の高さを第一印象で感じることができます。これは、高い技術、強い身体等の見えているポテンシャルを観るのとは違い見えてないポテンシャルを判断するので指導者の経験値も試されますと思います。具体例であげるならば身体的ポテンシャルが高い選手は「速い選手」と言えます。対して精神的ポテンシャルが高い選手は「強い選手」と言えます。「速い」と「強いが」が勝負をした場合には圧倒的な力の差がある場合は速い選手が勝ちますが力が拮抗してきた場合は必ず強い選手が勝ちます。その勝負強さが佇まいや発する言葉からも感じることができます。そこで、高い精神的ポテンシャルを作っている要素とは何かを考えます。土台となっているのは純粋に「好き」という気持ちだと感じます。精神的ポテンシャルが高い選手の特徴は正しい自己肯定感を持ち、それを土台として客観的に自分を観ることができます。客観的視野は柔軟な発想を産み場に応じた正しい判断ができます。正しい判断ができる能力は厳しい状況にあっても物事を好転させるエネルギーを持続させる事ができます。そのエネルギーによって現状よりも好結果に結び付けることが可能になります。この様な能力の高い選手が精神的ポテンシャルが高いと私は考えます。この傾向は陸上競技に限らず他のスポーツにも言えることですが一番力を発揮する場面はビジネスの場面だと感じます。なぜそう感じたかは今回は触れませんが機会があれば触れてみたいと思っています。
純粋に陸上が好きかを見極めるのは案外難しいです。正しくは好きな状態かを見極めるになるかもしれません。特に幼い子供の場合は細心の注意が必要です。保育園を経営している時に感じたことですが子供は自分の「出来る事」と「出来ない事」の区別がつきません。しかし怯まず挑戦します。これは経験が浅いため失敗のリスクを知らないからだと思います。そこで失敗をし経験値として蓄える事になりますが,この時の経験をポジティブに貯めるかネガティブに貯めるかで子供の方向性は決まると思います。小さな失敗を次回はは頑張る為の燃料として貯める子供と、同じ失敗は避けたいという危険信号として貯める子供の違いがあるからです。最近はこの様な傾向の子供が多く、競技会などに消極的な子供も多くいます。これには子供を取り巻く環境が昔と比べ変わってきていることが一番大きな原因だと思います。この件についても思う所は沢山ありますが今回は触れず機会があれば触れてみようと思います。
本当に陸上競技に限らず純粋に好きと感じている子供は失敗を燃料にしポジティブな方向性で経験値として貯めます。この様な子供には幾つかの特徴があるのでままとめてみました。
①好奇心が強い
②良い意味で楽観的で明るい
③一人でも行動できる
④嫌なことを忘れる
上記にの①~④の特徴を持つ子供は陸上競技に限らず自分の好きなことを素直に表現する事が得意です。しかしこの特徴はリスクもあり、危険な行為や間違った事にも直ぐに手を出し,楽観的に考えるため同じ失敗を繰り返します。一人でも行動できるから制御が効かず、失敗も経験として蓄積されない事も沢山あります。このことで①~④の特徴の子供は普通の子供よりも行動を多く起こし、失敗も多く経験していると仮定する事ができます。その失敗の度に小さな葛藤を繰り返す事になり指導者が気がつかないうちに失敗のストレスをため込む事もあるかもしれません。また体調不良などの場合も大人に比べ幼児は自分の体調を把握することが苦手なため不安定な状態を作りやすいと思います。これは、子供が本当に好きな事でも失敗の連続があったり体調不良などの要因で好きという感覚にブレが生じることもあると考えられます。この様なは時に著しく集中できない状態が作られ、手を抜いている、ふざけていると映る危険性が高くなります。保育園を経営した時に感じた事ですが幼い子供は上手に自分の潜在的な感情をコントロールする事ができません。失敗を経験値として貯めることができるようになるには感情をコントロールする技術を習得する必要があります。これは自身の失敗を客観的にみて修正する方法を身につける技術だと考えます。
これは上記①~④の特徴を備えた子供は自己肯定感を築きやすい特徴と同時に不安定な状態も作りやすいと考えるべきです。メソッドの中で精神的ポテンシャルの構築を家を建てる例で話をしています。自己肯定感を土台にしそこに客観的視野という心柱と柔軟に物事をみて判断できる柱を左右に配置しポテンシャルを安定し強く高くするイメージを作りました。そして純粋に好きと感じる気持ちは地盤の様なものとイメージできます。地盤が若ければ不安定な時も多くあるでしょう。地盤が成長すれば不安定さがなくなり強い土台を作れるようになります。選手の好きを見極める難しさは選手本来の特徴である好きという表面に現れているものと複雑な状況で選手が無意識の領域で感じている違和感の様なものに影響を受けていないかを判断する事です。この見極めができない場合においては不安定な状態を許すことができず叱責を与えることにもなります。当然不安定な状態でベストのパフォーマンスができない場合は叱責の対象ですが、その叱責を上手に消化できる精神的ポテンシャルを備えていない子供の場合は純粋に好きという地盤を崩す事になりかねません。もしこの様な不安定な状態になった場合にどうするかを考えてみました。これといった正解を見つけることはできなかったのですが最善の方法は待つことだと思います。不安定な状態を抜けるまで待つ。そして次に子供がどの様なアプローチをしてくるかで答えが出るのではないかと思います。
後 記
今回は精神的ポテンシャルについて深く掘り下げた記事を書くつもりでした。しかしその前にこのエピソードを挟んでみようと思った出来事があります。それは簡易的な記録会に子供を参加させようと考え、記録会に参加で出来るかのテストを練習で何回か行いました。一度目の練習では良い結果がでたため参加の方向で動きます。最終判断を記録会が行われる競技場で行った時に全く集中できていない様子があり自分のコースを真っ直ぐに走ることができません。この事により記録会に参加するのはまだ早いと結論を出します。
次の日に所用があり出かけました。この時に軽い熱中症になったと思われる症状が出たのですが本当にきつかったのは次の日です。頭の片隅に最終練習で子供の集中を欠いた理由が熱中症から来る物だった可能性を感じます。記録会は不参加と決めましたが参加でも良いかもしれないという考えが浮かびもう一度親御さんと相談してみようと考えます。ただ子供が不安定な状態のままであれば純粋の好きという地盤を崩します。やりたいか、やりたくないかを決めるのは本人が決めれば良いと考え、もし本人が出たければ何らかのアクションがあると考えました。予想した通り本人が記録会に出たいと言っている。どうしたら良いでしょうかと連絡が入ります。良いと思いますと返答をして「真っ直ぐに走ると約束をして下さい」とだけ伝えました。そして本人が好調時に見せる特徴が出れば大丈夫だろうという確信のもと当日を迎えました。記録会は成功です。これで次も期待できると考えまました。
先程も書きましたが子供は「出来ること」と「出来ないこと」の区別が出できません。だから出来ない事をできる(やる)と言うのは嘘ではありません。同様にできない時には不安定になります。ふざけているわけでも、手を抜いているわけではありません。できないから不安定になっているだけです。そこを見極めていく事が「純粋に好き」という地盤を盤石にする方法だと私は考えます。