子育てのヒント
2024年07月07日

精神的ポテンシャルの優位生2 

 試合で好結果を出す為に必要な要素は身体的ポテンシャルよりも精神的ポテンシャルが優位であると前回投稿しました。これは、ある程度高いレベルの達した選手だけでなく小学生や中学生でも精神的ポテンシャルの高い選手がより良い結果を出す傾向があると思います。競技を始めた段階では高い身体的ポテンシャルを身につけている選手が優位になります。高い身長、強い体の優位性がある選手が勝ちます。現在、本格的に陸上競技に取り組む年齢が低くなっている傾向にありますが大体は中学生になり部活動に所属した時期くらいから競技会に出るようになります。そこで小さな成功を続け、今の自分のレベルよりも一段階高いレベルで競技がしたいと考えるようになります。その時に大きな影響をもたらすものが精神的ポテンシャルです。また、長く選手をみて来た経験で身体的ポテンシャルの高い選手よりも精神的ポテンシャルが高い選手の方が将来的には成功しているとう経験もあります。当然、身体、精神両面の優れたポテンシャルは成功には不可欠になりますが、私が言いたいことはその選手が持つポテンシャルのどちらの傾向を強く持っているかということです。その時の印象で精神的ポテンシャルが優位の選手ほど成功する傾向が強いという経験があります。そのため精神的ポテンシャルの高い選手を見つけると気持ちがワクワクします。そこで、ベイサイドアスレチッククラブメソッド(松尾メソッド)では精神的ポテンシャルを高めることを第一の目的とし身体的ポテンシャルは精神的ポテンシャルの高さに合わせるという考え方を取ります。この考え方を解りやすく可視化したのが下の図です。

 

 先ず、身体的ポテンシャルをバケツの中の水で説名します。バケツ(1)には10ℓの水が入っています。この水の量が100mを12秒0で走る事ができるポテンシャルとイメージします。次にバケツ(2)は不安定な状態にあり中の水は外にこぼれています。この状態でバケツの中の水は8ℓになります。10ℓの水の量が12秒0のポテンシャルと考えるので8ℓの水の量は12秒5のポテンシャルに下がります。結果12秒5の記録になったとイメージして下さい。これがこの選手の実力と考えます。上図の(1)の解釈はは選手が持っている身体的ポテンシャルで(2)は選手の実力です。そこでこの選手はポテンシャルは12秒0であるが実力は12秒5と考えることができます。実力とはどの様な状態でも自分の持っているポテンシャルを100%発揮できることです。次に(3)の状態を考えます。これは不安定な状態でも中の水はこぼれません。自然界ではあり得ない状況ですが精神的ポテンシャルの高い選手は不安定な状態でもバケツの中の水をこぼさずキープできる選手とイメージして下さい。この時に不安定な状態になる要因は外的な要素と考えます。精神的ポテンシャルが低い選手の場合は、想定外のアクシデント、過緊張、その日の体調などで気持ちが乗らない、天候の悪化などの外からの要因で自分自身を不安定な状態にしてしまいポテンシャル通りの結果が出せない選手は多くいます。この状態がバケツ(2)のレベルの選手と考えます。対してバケツ(3)の選手は自分を取り巻く状況が不安定になってもバケツの中の水をキープできます。いくら高い身体的ポテンシャルを持っていても精神的ポテンシャルが低い場合は自分の身体的ポテンシャルを充分発揮できない事が起きます。この時の状況をストレスがかかると言い換える事もできます。そしてこのストレスが選手を葛藤の域に入ります。葛藤から成功域に上がるか、失敗域に落ちるかを可視化したものが成功のピラミッドです。

   

 成長には葛藤が必須です。成長とは身体と精神のポテンシャルがアップデートされることです。そこで身体的、精神的ポテンシャルの成長に伴い実力も向上するという考え方です。この葛藤域では、正しい判断や選択をし、正しい行動を行うことで成功域へ上がることができます。この能力を獲得するためには小さな成功体験の積み重ねと考えます。しかし幼い子供はよく失敗をします。これは前回の投稿でも書きましたが年齢が低いほど自分の出来る事と出来ないことが解りません。そのため無理なことにも挑戦します。そして失敗を繰り返します。また先程説明したように初めて経験する外的な障害には上手く対応できずに失敗することもあります。これでは小さな成功ではなく小さな失敗の積み重ねだと考える方も多いのですが、この様な考え方になる理由は、成功=良い結果とだけ考えてしまうからだと思います。試合、試験、大人になれば仕事でも結果が出た時に結果だけを褒める。この様な傾向があります。結果が出ない場合責められる。そうではなく、何を考え、何に悩んで自分の納得いく方法を選択し、実行する事ができたかといった過程を褒める大切さこそ理解すべき点だと考えます。そうしなければ小さな成功は積み上げはできません。良い結果であれ、思う様な結果でなかった場合も自分自身で素直に結果を受け止めることができる。そして良い、悪いに関係なく今の自分をアップデートさせる考え方ができるようになったならば小さな成功と考えます。そこで小さな成功が起きるときのメカニズムを可視化したのが下の図になります。 

    

 陸上競技に限らず全てのスポーツ、勉強や仕事にも共通していると思いますがスタートは①ローポジティブのポジションです。そこから②のポジションに移動します。ここまでの段階が純粋に好きと感じることができる領域です。この段階で経験する小さな失敗を危険信号と捉えてしまうと今後の成長は難しいでしょう。そして③ハイポジティブのポジションへ移動します。この段階で自己肯定感が完成します。そこで自分のポテンシャルを上げたいという欲求が生まれ目標を作り、目標を達成する方法を考え行動する様になります。その後壁にあたり④ハイネガティブ(葛藤)に入ります。この時に成功域⑤へ移動するには高い精神的ポテンシャルが必要になります。精神的ポテンシャルが低い場合は失敗域の❺不満に移動します。一度❺不満に移動した場合再び葛藤④に戻ることは難しいです。強い精神的ポテンシャルを獲得している選手は⑤で不安の正体を確認し⑥で自身の進むべき方向性を決めることができます。この段階でほぼ成功を手に入れることが出来きます。そして、さらに上のポテンシャルを獲得するための行動を継続します。ここで同じ様に①のポジションからスタートするかいきなり③のポジションからスタートするかの個人差はありますが同じ様なサイクルで葛藤に入ります。この時の葛藤は以前よりも難しい問題を処理ることになりますが成功、失敗の経験値が多くなる分精神的ポテンシャルも強くなります。そのサイクルを何度か経験した後に⑦ゾーンには入る能力を身につけます。

 後 記

 精神的ポテンシャルが高い選手は素直で聞き分けが良い選手だと想像する方は多いと思います。精神的ポテンシャルとは自分自身を客観視できる能力があり、その能力があるが故にセルフコントロールの技術が高い選手だからです。しかし、その姿が本来の自分の姿を抑えている姿であれば悪い意味でのセルフコントロールの技術と言わざるをえません。前回の投稿でも書きましたが「純粋に好き」という感覚があり、その感覚が土壌となって精神的ポテンシャルの土台が作られます。何が言いたいかと言うと純粋に好きな感覚は自分自身のために持つべきであり、誰かの期待に答えるために持つべきではないということです。最近の傾向として若い年代でも大人の顔色を伺いって行動する頭の良い子供もいます。それよりも純粋に好きという感覚が、良い傾向とは言えませんが「我が儘に自分のやりたい事」として現れている子供の方が可能性を感じることも多くあります。この場合に指導者は選手が望む支援以外の余計な指導をしないことをお薦めします。これが面倒くさいんですが反面おもしろい。この感覚も純粋にすきという感覚から来るものかもしれません。

 次回は精神的ポテンシャルの育て方を詳しく解説します。