子育てのヒント
2023年02月07日

トイトレ(トイレトレーニング)

 トイトレ(トイレトレーニング)

 保育園では2~3歳児クラスでトイレトレーニング(以後トイトレ)を行います。これは、おしめを卒業し自分でトイレに行き排便や排尿ができる様にする為の練習です。最初は時間を決め、排便や排尿がなくても便器に座る事から始め、おしめを汚さない事ができる様になったら次の段階に進みます。次はトイトレ用の厚いパンツでの練習になります。おむつは水分を吸収し、基本的には不快感を感じないようにつくられていますがトイトレ用のパンツ(以後トレパン)は厚く尿漏れ等がしにくい構造ですが濡れた時の不快感は感じます。そこで不快感を感じたくない為には自分で排便や排尿をトレパンにせずトイレでできる様にならなくてはなりません。大体最初は失敗します。その為トイトレ期間の子どもを観察し、決まった時間以外にも尿意を催していると判断した場合はトイレにつれて行きます。また、本人がトイレに行きたいと言える様にも配慮します。外出の際にはトレパンではなくおしめを使用しますが、幼児にとっては始めて経験する壁を越える練習かもしれません。
 この時の子どもの一番の課題は、便意や尿意をコントロールする事ではなく、衣服の脱ぎ着になります。今まではスタッフがトイレ付近に用意されているおしめ交換用スペースで行っていましたが自分の意思でトイレで用を足さなければならないため自分だけで脱ぎ着ができる事は必須になります。多くの子どもはこの脱ぎ着に戸惑いますがそのこと自体をストレスと感じ荒れてしまう子はいませんでした。ある程度はスタッフが脱ぎ着のフォローをする為に本当に自分だけで用を足さなくてはならない場面はそんなに多くありません。慣れてきてからは脱ぎ着も自分に任せる様になりますがトイトレ開始の3歳児前後では、ほぼフォローされた脱ぎ着になります。
 そこに例外が現れます。その子を仮にAとします.Aは3歳児クラスでもうすぐ4歳という年齢で、両親は穏やかでとても子どもに対しても細心の注意を払う方達でした。Aも親御さん同様穏やかで、聡明なタイプです。ややこだわりが強く設定保育等で作業をする時などでも他の子どもが作業を終えて遊びに行ってしまった後も自分の納得がいくような作品ができるまで熱心に活動すます。只、熱心である理由は非常に器用でない為、他の子どもが簡単にできる事にも時間がかかってしまったという事もあると思います。このAがトイトレを境に荒れ出します。何かあるとすぐに癇癪を起こす。気に入らないことがあればふて腐れる。時には暴れる。この様な行動が目につき出します。園内でも,外遊びや昼食の時間でも荒れる傾向が強くなっていきました。原因はトイトレではないかと思います。スタッフもトイトレがストレスの原因と考えトイトレの方法を見直す事にしました。
 Aは子どもの割にはおしゃれな服装でと登園します。外遊びの時には外遊び用の服に着替えます。そこで親御さんと相談し脱ぎ着がしやすいスウェットに変えてもらう事にしました。他の子どもの例では、ある程度これで収まります。しかしAは収まりません。荒れ度は加速していくようでスタッフも手を焼くようになっていきます。お迎えの時も母親に悪態をつくようになります。これが「悪い状態」について考える切っ掛けになります。
 イヤイヤ期と違いAが荒れている原因を探し、排除しなければ収まらない。そう考えました。そこでAの悪い状態の原因を取り除き元の状態に戻すことを目的とした取り組みを始めることになります。以下はその取り組みの例です。
1,どんな取り組みをしたか
(1)上級年代の子ども達と同じ行動をする
 上級グループの遠足に入れ一緒に行動させる。自分より年上のグループと行動させることにより自分の能力以上の経験をさせる。
※遠足とはひたすら歩く設定保育です。長いときは2時間程度は歩きます。
(2)自分で判断させる
 遠足に行く判断は自分でさせる。その際に私(園長)が直接Aに回答を求めず主任のスタッフに聞いてもらい本人に判断させる。
(3)やりきる事を経験させる
 上級生グループ、Y君、H君、Mちゃんに今日はAも一緒に行くのでサポートをして欲しい事を事前に伝える。3人がAが苦しくなった時にサポートをしてくれたおかげでAは無事遠足を終える事ができた。
(4)今日の経験を評価させる
 園に帰ってすぐにAに格好良かったと伝える。これができるのだから他の事もできる様になると伝える。
※子どもに対し頑張っている時にかける効果的な言葉は「格好良かった」なので評価は、格好良かったになる。
(5)今の自分の状況を理解させ悪い状態から抜け出す切っ掛けを作る
 Aに対し今日のAは格好良かった。でもトイレの時のAはどう思うか考えさ、どちらになりたいかを聞く。当然格好良くなりたいと答えるので園長は協力すると伝える。
(6)トイトレ1
Aがトイレに行きたいときは必ず私に声をかけるように指導する。その際に手伝って欲しければ手伝って欲しい、自分でやりたならば自分で最後までやりたいと伝える事を徹底させる。
(7)トイトレ2
自分で最後までやりたいと決めた場合、上手に脱ぎ着が出来なかった時に感情が乱れる時がある。この時には格好悪くなってもいいのかとたしなめる。
※騒がない,暴れないという指導は行わない。格好悪くてもいいのかと窘める。
(8)家庭との連携
親御さんにも本人が最後までやりたいと言ってきたら脱ぎ着の手伝いはしないで下さいと伝え家でも実践してもらう。

2,経過
 取り組み後、2~3日で結果が出始めます。10日もしないうちにAは落ち着きを取り戻し以前のAに戻りました。Aが悪い状態になった原因はひとつではなかったと思っています。複数の原因が同時に作用した事でAが悪い状態になったと私は考えます。

次回はこの例をもっと深掘りします。メソッドにに沿って何を観て、どう練り、どう行ったかを解説します。