松尾メソッド
2023年03月08日

強化の方向性を決める

 前回はメソッドで観るという事を説明しました。今回は練るとはどの様なことかの話をします。練るとは強化の方向性を決めるまでの段階です。次回は具体的な方法について書いていきます。

 強化の方向性を定める

1,ポテンシャルを決める
    選手の本当のポテンシャルは身体的なポテンシャルに精神的ポテンシャルを足したものを基本に考え、その基本に今の状態をかけて決めます。私はこの作業が選手の未来を決める重要な作業と思いますが、大旨、身体的ポテンシャルの高さのみを評価し強化の方向性を決めてしまう指導者も多くいるように感じています。それは身体的ポテンシャルは目に見えやすいですが精神的なポテンシャルは目に見えません。そして状態(悪い状態)は詳細な観察眼に経験がなければ見逃す事が多いものです。下は現在の選手のポテンシャルを決定し、強化の方向性を決定する方法と段階を示しています。
※以下精神的なポテンシャル(身P)精神的なポテンシャル(精P)状態(状)で表す。

(1)大まかな型を決める
A・・(身P良)+(精P良)×(状良)
B・・(身P良)+(精P悪)×(状良)
C・・(身P悪)+(精P良)×(状良)
D・・(身P悪)+(精P悪)×(状良)
E・・(ポテンシャルに関係なく)×(状悪)

    大まかには上の様に解る事ができます。悪いを弱いと表してよいと思います。そこで先ず行う事は悪い(弱い部分)を整える事をします。上記で該当するのは、B、C、Dのグループです。注意すべきことは悪い(弱い)部分を強化するのではなく整えるというニュアンスを理解することです。闇雲に強化しようとすればそれが原因となり指導に対する不満が生じます。その不満が悪い状態となった場合、やる事全てが逆効果になります。その為に何の目的で行うのか、その事でどの様な効果が出るのかを説明し、最終の決定は本人が行う。この様な手順が必要です。
Eに関しては何もしない事が重要です。一番多い例としては自分の意思ではなく第三者の意思で無理矢理やらされている場合が多いでしょう。本人のやる気(良い状態)になるまでは具体的な指導は行わず本人が興味を持つであろう事だけを行う様にします。それでも悪い状態のままであれば「やめる」も選択肢に入れるべきです。

2,実力をつける
    ポテンシャルと実力は違います。高いポテンシャルを持っていても本番の試合で自分のポテンシャル以下のパフォーマンスしかできないのであれば実力があるとは言えません。実力とは自分の持っているポテンシャルを本番で発揮できて始めて実力があるといえます。強化の過程では、選手それぞれの特徴を踏まえ弱点を強化する方向性が向いているタイプ、強みを伸ばしそれに付随する形で弱点を克服する方向性が向いているタイプがあります。指導者選手個々の特徴と向いている方向性を踏まえ強化のプランを考える事が大切です。そこでやるべき事は聴く事と待つ事です。

(1)聴く
 身体的ポテンシャルで技術優勢型か、体力(筋力)優勢方です。前者は綺麗なフォームを身につけています。しかし、筋力がなく,選手によっては小柄な為に良い記録が出せていません。後者は力強い動きができます。しかし無駄な動作が多く十分い筋力を動きに活かせていません。この場合は素直に考えて良いと思います。弱い点を強化することになります。しかし身体的ポテンシャルでもすぐに見えないものがあります。それがコンデションを管理し疲労を溜めない又は回復が早いポテンシャルです。これは内臓の強さや生活をしっかり管理できる精神的ポテンシャルを高めなくてはなりません。大方の場合、身体的ポテンシャルが高く、目的を持ち練習をするうえで精神的なポテンシャルが高まって行く傾向があります。そしてこの段階で上手くいかなかったり指導者のやり方に不満を持つと「悪い状態」になります。その悪い状態を回避する方法が選手の意見を聴くという事です。聴くという事は悪い状態を回避する目的もありますが、選手が強化の過程を話す事によりフィードバックを行う事にもなります。将来的にはインプット→アウトプット→フィードバックを練習の中に取り入れたクラブ運営を計画しています。

(2)待つ
 結果はすぐに出ません。ですから待つ事も選手を強化するうえで大切な事です。ただ、期限もつけずに時間だけを無駄にする様な方法では結果はついてこないでしょう。目的を明確にし完成させる期日を設定します。階段を一歩ずつ登る様なイメージで地道に活動する。成功には近道はありません。良い指導者はじっくり待つ姿勢を身につけるべきです。
 待つという事に関するならば悪い状態を良い状態に変える事は待つだけではなく良い状態に導く工夫も必要です。何もせずに待つだけでなく選手の精神的なポテンシャル良い方向に向かわせる工夫と忍耐も指導者にとって大切な要素といえるでしょう。