子育てのヒント
2023年04月22日

フェードバックを深掘りする2

 フェードバックを深掘りする2

    他人の失敗で激しく感情的な態度を出してしまう。これは短所とみる傾向が強いでしょう。前回「遠足」でのペナルティーで失敗した子どもに感情的に接してしまった事で相手を泣かせてしまった失敗についての深掘りをしました。この様なタイプの子どもは仲間からも、大人からも敬遠させがちですが違う見方をすれば裏表のないさっぱりとした性格ともいえないでしょう。私見になります。長く人間を観察する仕事をしていると案外人の裏表が見えるようになります。人間ですから裏表が全く存在しない人はいません。多少の裏表はあっても案外このような自分に正直なタイプの人間は嫌いではありません。しかし自分の表現の仕方は上手くないと考えるべきです。松尾式(メソッド)ではこの様なタイプは勿体無いというと考えます。そこでこの様なタイプの子どもが効果的に相手に自分の意思を伝えるトレーニングとしても使えるメソッドと考えます。

1,特徴を見極める
 思った事を自分の感情のまま言葉にする。これは短所と考えるべきでしょうか。そこで前回列に割り込まれた時の対応を例を少し違う角度から考えてみましょう。もし、自分だったら割り込まれた時の相手に注意できますか。もし、自分のすぐ前でも口に出して注意する割合はどれくらいでしょうか。半分くらいでしょうか。例を変えます。自分の前にお年寄りがいたとします。貴方は席を譲る事ができますか。この例えは行動を起こす人間か起こさない人間かという点に着目しています。前のエピソードでのBは言い方は適切でありません。しかし自発的にモーションを起こせる特徴があるといえます。軽率に動いてはいけない場合もありますがモーションを起こすべき時に起こせるのであれば何もしないよりは良いのではないでしょうか。今回の事柄を簡単な算数で表してみます。

    ① 10×0=0 ・・思うところがあるが行動を起こせい(現状は変わらない)
 ② 10×2=20・・行動を適切な方法で起こす(良い方向性に向かう、影響が広がる)
  10はその時思った事。×の後の数字は行動力です。答えは効果,あるいは場に与えた影響と考えて下さい。そして失敗した時の式が以下になります。
    ③ 10×(-2)=-20になります。この時の②と③の影響を数値化すると40の違いが出ると考えて下さい。
 
 ①は行動できなかった場合です。場合によっては「見て見ぬ」と評価される事もあります。この場合はどの様なことを考えたにせよ状況は変わりません。②③は行動を起こした場合です。共に状況は動きますが適切な方法と言動を用いた場合と適切でない方法と言動の場合では状況に全く逆の変化が起きています。Bの行動によって状況は-20という失敗の数字を出してしまいます。これは動機の方向性が裏側にでているとからで動機の方向性が表側に出ていれば集団への影響は20になります。人を育てるという事は失敗をしない機械の様な人格を作るのではなくそれぞれが持っている特性を良い方向性で発揮できる能力を育てる事です。Bにとって大切な事は「余計な事をしない」ではなく「正しいやり方を」身につけるになります。

2,長所と短所には裏と表がある
    人には長所と短所があると言われますが私は若干違うと思います。人には特徴があり特徴が良い方向性で発揮された時を長所。悪い方向性で発揮された時を短所と呼ぶと考えています。学校や職場で教育立場の人間が人を教育する場合、失敗をしない人間を作るよりも個の特性を把握したうえで個が一番力を発揮できる方法を考え指導すべきです。時代の流れか最近は個性を尊重しようなど言われるようになってきていますが現状は本当にそうなのでしょうか。何故、個を活かせきれないかの答えは明確だと思います。個には棘もあり無駄も多く存在します。そこで集団行動(場合によっては世間、会社、組織)に適した行動がとれるように棘を削り、無駄をなくす教育をします。しかしこの教育といわれるものが個の自発的で行われたものでなければ個の成長はありません。しかし目先のリスクを考えれば、先ず集団からはみ出さないような個を作る。この方が楽です。個の立場でも考えてみます。自分の棘を削るのも、無駄がないように考え行動する方法も与えられた方が楽です。個が育たないのは楽をして手間暇かけて丁寧な作業をしないからです。またできないからです。棘を削られたふりをして裏では見えない棘を世間にばらまいている不埒な輩も多くなってはいないでしょうか。棘は自分で削らなくては丸くなりません。自分で削りしっかり育てれば角になります。角は簡単に刺さりませんがいざという時に自分を守る武器になります。本当に無駄のない方法を知っている人間は誰よりも無駄を経験しているはずです。
    Bに話をもどします。Bは行動できるという特徴があります。一応Bという言い方をしていますがこの様な例はいくつもありますのでBは個人ではなくBの様な特徴を持った子どもとと考えて下さい。Bが正しい方向性で行動するためには前回の投稿の目的と動機の一致が必要です。しかし人間には感情があります。激しい感情の動きをコントロールするためには練習が必要です。練習をするうえで必要なことは正しく自分を把握することが不可欠になります。感情と行動性の相関を表したものが下図になります。

   Bの特性は(陽)の特性が強い子どもと考えられます。目的が失敗をしたAにルールを守らせる事ですが行動を起こすスイッチを入れたもの(動機)はAに対する不満です。この動機が後のBの行動を決定したと考えます。それが上図の「悪い方向」(裏)の行動や言動になったのではないでしょうか。次回は特性が表として継続的に発揮できる方法(練習)を考えてみましょう。

 雑記

 個性を尊重しようという声は大きくなりますが個性を特性と考えるなら、当然表と裏があります。表を出したければ裏を知ったうえで裏を鍛える。それをしない個は我が儘になるだけです。子どもも選手も社会人も本当に大切な事は自己の裏を知り、裏を鍛える事です。指導者は裏を鍛える手助けをして決して裏にまで踏み込まない。裏を鍛えるのは自分自身にしかできないのだから。