松尾メソッド
2023年05月25日

メソッドの欠点

 松尾メソッドの欠点

 今回はメソッドの弊害というか悪い理由を幾つか紹介します。このメソッドの元となったアイデアはアメリカのスポーツ心理学者ジム・レーヤーの「メンタルタフネス」という本です。他にも参考とした書籍は幾つもあります。そこに自分の現場での経験を加味しメンタルタフネスのエキスを自分が扱い易いように改良して作ったものです。メソッドといってもこれをすれば速く走れるといったノウハウ的なものではなく哲学的な要素が強いものです。したがって効果が現れるまで時間がかかったり、目に見える変化では感じずらいと思います。これは選手の技術力よりも精神的な成長を目的とするたからです。以下にメソッドの欠点を整理してみました。

1.解りづらい
 元々参考にしている書籍が心理学の文献であるため運動生理学的な体をどう使えば速く走れるようになるといったものではありません。これには自分自身の経験が大きく影響していますが学校現場、幼児教育、そして千葉県小中体連関係の活動の中で伸びる選手は必ず身体的能力よりも優れた精神的能力を持っています。人並み、それ以下の身体的能力であっても強い精神的能力を持っている選手は必ず成功しています。この場合の成功とは本人の目標や身体的能力によって異なりますが全ての選手が自分が求めた結果を手にしています。
 成功する人間は、自分自身が成功と認める地点までたどり着けることです。途中で困難や挫折を多く経験しますがそれを上手く切り抜け前に進み続けることができます。そして、自分が決めたゴールへたどり着くことができます。困難や挫折を強行に、時には柔軟に切り抜ける技術を学びながら自己をステップアップすることができます。しかし個人の能力、ポテンシャルによってアプローチに方法を変えたり、その時の選手の状況では前回の真逆のことを言ったりすることも多くあります。メソッドも世間の常識の逆のことを言っている事も多く解釈するのが大変な方法論です。

2,効果がすぐに現れない
 前述の様にこのメソッドは方法論のノウハウを教えるものではないので成果が目に見えて現れません。例えば速く走るコツとして「リラックス」して走るといものがあります。リラックスとは無駄な力を抜くことですが簡単な様で難しいのが力を抜くという行為です。そこで自動的に力を抜く運動(行為)をさせて結果的に力が抜けたリラックスした状態にするメソッド(ドリル)の方が結果は早く出ます。ただ選手がこの練習の意味を理解して行っているかを考えた時、本当に解っているのかなと疑問に感じる場面の方が遙かに多いことも事実です。最初は良くても時間とともに惰性でやっている動作になる。指導者の前だけが正しい動きであっても普段が正しくなければ意味はないと考えます。そこでリラックスとはどういう事か、どこの力を抜けば良いか、その為にどうすれば良いかを考えさせ、その答えに合ったドリルを考えていきます。時間はかかります。指導者の辛抱も不可欠になります。

3,方法が面倒で実用的ではない
 最初の交通機関でルールを守れなかった子どもと、その子どもに怒って失敗したエピソードの話をしたが、そもそもあの場合、失敗した子どもには次はちゃんとルールを守れる様にしなさい。怒った子どもには言い方に気をつけるようしなさい。これで終わりです。その後も問題を掘り起こしてネチネチと考えさせる必要はあるのでしょうかこの様な意見もあるはずです。先日電車の中で3歳前後の子どもを連れている何組かの親子を見ました。一組は靴のままベンチに膝立ちになり外の景色を見ていました。父親は携帯に夢中です。もう一組は母親が靴を脱がせ,ちゃんと揃えてベンチに膝立ちで外を見ています。一目で後者の方が良いと感じます。その後の成長もどうなるのかも想像できます。でもどうして靴を脱ぐ必要があるかを教えている光景は見たことはありません。靴を脱ぐ理由は隣の人への配慮です。隣に人が居ても居なくても配慮する気持ちを育てておく必要はあります。その配慮のことを考えさせるならベンチに膝立ちで立って外を見ない方が良いことになります。3歳後半になればある程度倫理的な判断ができる様になります。具体的には良いことか、悪いことかの判断です。子どもにとっては格好良いか,悪いかのと言った方が理解させやすいです。靴を脱ぎ、ある程度の時間を外を見る事を容認した後、皆はどうしてるかを考えさせ、今の自分の行動が良いか、悪いか(格好良いか、悪いか)を考えさせます。そのうえで格好良くするにはどうすべきかを考えさせ、できるかどうかの判断は本人に任せます。正しい判断ができた時には評価し、間違った場合は理由を聞くでしょう。そのうえでその理由に子どもなりの考えがある場合は一度大人も熟考しても良いと思います。子どもが理解し納得できる考え方が見つかるまでは力業で納得させるのは悪手と考えます。この様に面倒で手間暇かけるやり方は効率的ではないのです。これがメソッドで行う手法です。面倒ですね。回りくどくて説教くさい。余裕がなければやってみようとは思えない方法です。

4,最終判断は子どもに委ねる
 メソッドの目的は選手、子どもの自立心を育てる事です。言われたことを意味もわからず行うだけでは本当の進展はない。もし指導者がいなくなったり、変わった時には何もできません。だから指導者は選手が自律できる援助をする。時には指導者の考えと違う方向性を考え独自の方向性で進むこともあります。逆にまだ未熟な段階で自己主張が強くなりすぎて結果的に失敗と考えざるをえないこともあるでしょう。それでも最終的な判断、決断は選手に委ねます。これはアドラー的な考え方です。もし、選手がもう止めると判断したならば引き留めません。来る者拒まず、去る者負わずを徹底するため残念な結果になる事も沢山あるでしょう。

※アドラー
 アルフレッド・アドラー(1870~1937)オーストリア生まれの心理学者。アドラーの考え方を分かり易く解説した「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」がある。

 
 成功とは

 これは持論です。成功とは結果的に自分の思っている目標を達成することですがそれに不可欠な条件は諦めず目標であるたゴールにたどり着くことです。途中で止めてしまっては成功とも失敗ともいえません。言い換えるならば成功を求めて最後のゴールにたどり着けなければ失敗も経験できないことになります。
 またゴールで結果的には自分の思い描いた結果でなく失敗と判断した場合でもゴールにたどり着いたと時に味わう達成感。時には脱力感。それが自信や喜びとなりあるいは後悔として新しい挑戦への意欲を生み出せたたなら成功と言って良いのではないでしょうか。そのためにやるべきことは一つだけです。もがいても、泥臭くても途中で諦めずゴールまで行くことです。この時に見える景色が良い物も辛い物も経験となり自分の力になります。その為に自らの意思で考え、動き、自立し、自律することができる能力を身につけることです。その能力を高める目的とするのがこのメソッドがです。この時、手に入れた力は時を超え自身の人生において大きな力になります。陸上競技に本気で携われ時間は短く、それ以上の何倍もの時間が残りの人生には待っています。この時の得た力を前向きに、成功に向けてポジティブに考え,判断、行動できるエネルギ-を持ち続けることが成功と思います。


 雑記

 勝ちこだわるか、勝ち方にこだわるか。このメソッドは「勝ち方にこだわる」考えははだと思います。勝ちにこだわるとは、方法はどうであれ勝つことが優先されます。勝ち方にこだわるとは勝ちにたどり着くまでのプロセスを大事にします。はっきり言って結果だけを求めるならば勝ちにこだわる方法を取る方が良いです。勝ち方にこだわる方法はゴールまで遠回りをするため時間がかかり合理的ではないかもしれません。しかしその分多くの経験ができる為実力はつきます。その力は一生物の力となると信じます。世間には色々な考え方がり方法があります。自分にあっている。しっくりくる都感じたならば是非試して欲しい方法です。成功の項目で成功するためには、諦めないことが大切だと書きました。次回は諦めないために諦めるという内容で書きます。ポイントはメソッドの中にある「観る」「練る」「行う」「続ける」です。