松尾メソッド
2023年07月06日

ポテンシャルは活きている

 ポテンシャルは活きている

 前回目標の立て方とポテンシャルについての話をしました。今日の話題はポテンシャルについいてもっと掘り下げます。以前ポテンシャルについてのレポートを一度あげていますが今回は別の角度からもう一度ポテンシャルについて掘り下げます。
 目標の立て方は、大、中、小の目標を決め、大目標から逆算するように中目標を決める。中目標と中目標を小目標で繋ぎそれぞれの目標に目的を持たす。目的を達成する為にやるべき事柄を整理する。この事柄が課題になります。課題をひとつクリアーする度に実力が上がる。要するに自分のポテンシャルが上がるという内容です。今回は登山に例え分かり易く解説します。
 大目標が山の頂上。中目標が途中のポイントになる地点。中目標と中目標を繋ぐのが小目標になります。小目標は1日、1週間、1ヶ月の単位で課題を決め解決することによって自分のポテンシャルを上げていく。これが山頂に向け順調に登っている状態です。この様にイメージして下さい。順調にポテンシャルを上げることができていれば山頂に向けてゆっくりでも登っていますがポテンシャルを上げることができなければ前に進むことはできますが上に登ることはできません。間違った判断をしてしうとポテンシャルが下がり進めば進むほど下に下って行きます。これでは前に進むほど頂上からは遠く離れることになります。実際の登山であれば体感で登っている、下っているは解ります。しかし、私たちが練習していくなかで登っているのか下っているのかを判断することは難しいと思います。そこで戦略的な練習ではポテンシャルが不安定な状態にならない様に注意深く練習のスケジュールを管理することが大切になります。そこでポテンシャルが不安手になる原因を探していきましょう。

1,ポテンシャルは生き物
 ポテンシャルは常に成長し続けることはできません。大切に扱わないと成長するどころか退化します。そこでポテンシャルを成長させる為に必要な栄養を考えます。先ずポテンシャルはには身体的ポテンシャルと精神的ポテンシャルがあります。そこで先ずこの二つの説明から始めます。

(1)精神的なポテンシャル
 ①簡単に諦めない粘り強さ
 ②間違った判断をしないための知識の蓄積、及び決断できる勇気
 ③場合によっては「明らかに見極める」判断ができる勇気と柔軟性 
 ④自分と違う考えや意見を聴き必要と思う(あるいは一部)を受け入れるしなやかさ

 等になります。そこで精神的なポテンシャルの栄養は経験です。特に失敗や困難な状況は特に精神的なポテンシャルを高めるのに有効です。この部分を葛藤といいます。しかし残念なことに多くな場合葛藤は回避されがちです。大人が自分の子供が葛藤の域に入ることが心配でわざわざ葛藤の種を抜いてしまうこともよく見かけます。これも解りやすい例えで説明しましょう。歩き始めたばかりの子供は転倒することは危険です。ですからある先に危ない石があったら躓かないようにどけることは必要です。しかしある程度成長した子供でも同じことをしてしまえば子供は石に躓くことも、そして石をよけることも知らずに大人になります。この状態で世間という現場に放り出されることを想像してください。怖くなります。戦略的に考えるならば必要な失敗は経験として蓄積されます。そこで必要となる条件が以下の通りです。
 
 ①本人が望んで判断し決断した場合の失敗
 ②失敗の取り返しが可能であると指導者が判断し本人が決断、行った失敗
 ③失敗の取り返しが可能である状態(悪い状態)でない時の失敗

 私たちが学生の頃、失敗すると反省文なる物を書かされた記憶がありますが本当に賢い人間は失敗を反省したりしません。分析します。失敗の原因を考え同じ間違いをしないいように失敗をする行動や考えと失敗しない行動と考えのグループに分けて保存します。このデータは経験を重ねる度にアップデートされ、このデータベースによって間違った判断を回避することができます。そして賢い人間にはもう一つの特徴があります。成功した時も分析することを忘れません。失敗にも成功にも原因があります。その原因を把握していることで正しい選択をする時に大いに役に立つはずです。

(2)身体的ポテンシャル
①正確な動きを身につけている(技術力が高い)
②優れた筋力を身につけている(瞬発力、筋持久力が高い)
③筋肉、内臓の疲労の回復が速い

 身体的ポテンシャルは正確で無駄のない動き。速く強くを長い時間でも力を発揮できる筋力を持っていることです。それに回復の早い丈夫な体が加わったものが高い身体的ポテンシャルを持っていると考えます。身体的ポテンシャルの栄養は練習です。しかし同じ物ばかり食べていても栄養が偏ってしまう様に栄養は満遍なくとる必要があります。技術力を上げる練習、筋力を高める練習、疲労を積極的にとるための練習といった目的を明確にしスケジュール管理をする必要があります。何も考えない練習スケジュールでは練習するとポテンシャルを下げる結果になるますので注意すべきです。

2,ポテンシャルが下がる理由
 戦略的にポテンシャルを活用するならばポテンシャルが成長を続ける状態にしなければいけません。登山で例えるならば山頂に向けてゆっくりでも良いので登っていなければならないということです。そこで重要なものがコンデションになります。私たちもコンデションが良い時と悪い時を比較すれば当然ですが良い時の方が成功に近い結果を得られると思います。例えば病気の時には栄養の高いがっつりとした食べ物よりも体に優しい食べ物の方が有効です。同じ様に精神的、身体的ポテンシャルのコンデションが悪い時には充分注意を払わなければいけません。ここで選手とコーチの関係性をドライブに例えて話をします。

(1)精神的ポテンシャル・・・ドライバー(運転をする人間)
 経験を上手に自分のデータとして活用できるため間違った道を選ばず運転をすることができます。常に安全運転に注意し手運転するので安心感が高い。しかし突然コンディションを乱すことがあります下の図はそのメカニズムにつて説明したものです

 これは順調に進んでいた物事が予期せぬ事態で上手くいかなくなった。困難が生じた時に本来自分に備わっていた能力が狂いだした例です。ポテンシャルを上げ続けるためには渋滞にはまらないようにしなければなりません。これを陸上の練習でいえば事前に不要な葛藤に突入してしまう危険性を排除することです。この不要な葛藤が体調不良やけが等です。健全な葛藤であればポテンシャルを上げる効果はあります。これはスイスイ走れていた時はローからハイのポジティブの瞬間です。この後自分の壁を感じる瞬間が出てきますがこの壁はある程度予想はできます。壁に挑戦するワクワク感を感じることができれば壁を越えるのはそれほど難しくは内でしょう。しかし予期せぬ出来事(体調不良やけが)などでは健全な葛藤はできません。またこの時期を精神的なポテンシャルを上げる機会ととらえられるようになるには現役を退き指導者となった場合でなければ難しいでしょう。なぜなら選手自身は客観的に自分を観る事が難しいからです。そこで指導者(コーチ)は選手を客観的かつ俯瞰的に観て間違った選択をしないように導く事が重要です。

(2)身体的ポテンシャル・・・自動車の性能(エンジン)
 身体的ポテンシャルは自動車でいうエンジンです。人間でいえば筋肉(筋力)このエンジンが故障する自動車は走れません。人間であれば体調の不良や最悪肉離れなどのけがのことです。これを上の図に当てはめると下記の様になるでしょう。そこで指導者は体調や筋肉が故障しないように注意して選手を観察しなければなりません。特に選手の調子が良すぎるときなどは選手が自分のポテンシャル以上に動けている場合があります。自動車で例えると180kmまでのメーターの自動車で250kmを出し続ければ自動車は壊れます。瞬間的には出せるかもしれませんがこのスピードは瞬間的なものであるという認識をもって速度を落とす判断が必要です。練習中にポテンシャルを越える動きをした場合は練習の質量とも落とす勇気は必要です。

(3)ナビゲーションシステム・指導者(コーチ)
 コーチの役割は自動車で例えるとナビゲーションシステムです。始めて行く道でもナビゲーションシステムがあれば道に迷うことはありません。また渋滞等の情報を事前に伝えてくれます。先程も書きましたが選手時代には自分を客観的に観る事は難しいですが一たコーチとして選手を観るならば客観的かつ俯瞰的に選手を観る事ができます。そして間違った判断をしないようにガイドするのがコーチの役割です。運転するのは選手です。最終的には選手の判断になりますが戦略的に指導をしていたならば選手が間違った判断をすることを回避できます。戦略的指導とはポテンシャルを正確に理解し成長させるための道筋を選手に提供すること。そして選手が間違った判断をしないように細心の注意をはらい見守り続けることだと私は考えます。

 後記

 先程180kmのメーターの自動車が250km出して走れば壊れるという例えを出しましたが、250kmで走り続けても壊れないこともあります。それはエンジンを250kmでも走り続けられるようにカスタムした場合です。勿論カスタムするのはコーチの仕事。自分でカスタムして走れるという確信があるのならば250km出し続けて問題はありません。しかし偶然の250kmに興奮して次も250kmを要求したり250km出ないと責めるコーチも意外と多いんです。これ、本当に糞接です。次はやっと戦略的指導で一番大切なコンデションのお話。