松尾メソッド
2023年12月16日

実力がポテンシャルを超える時

 前回の投稿で実力はポテンシャルを超えない。これは1000円のポテンシャルならば1200円の商品は買えない。1200円の商品が欲しいのならば1200円のポテンシャルを備えてから買わなければ失敗する。当たり前です。しかし陸上競技は不思議なもので1000円のポテンシャルで1200円の商品を買えてしまうこともあります。解りやすく受験に例えてみましょう。
 自分の偏差値が60だとすると偏差値をポテンシャルに置き換えるとポテンシャルは60になります。この時に偏差値65の志望校を受けても合格の可能性は非常に低くなり、自分のポテンシャルと同じ偏差値60の学校を受けても100%合格できるとは限りません。偏差値56前後でほぼ85~95%前後の合格確率となるでしょう。その様に考えるとこの受験生の実力は56(+4)前後となります。これがポテンシャルと実力の関係です。勿論、65の志望校を受けて必ず失敗するとは限りません。受験はあくまでも試験当日の出来次第で決まります。しかしこれは自分のポテンシャル以上の実力が偶然と必然が混ざった奇跡の様な結果と考えます。そして合格した65の実力を必要とする学校で56+4前後の実力ではその集団について行くのには相当の困難も待っています。ですが、ここから考え方や勉強のやり方で二つの道を選択することになります。一つは集団についていけずその学校に底辺に沈むこと。これでは実力56+4の学校で上位にいた方が結果的に良かったという事になります。もう一つは必死で集団に食らいついていき結果的に自分の実力を65にまで引き上げるという選択です。
 同じ様なことが陸上競技の世界でもあります。中学校時代に優秀な成績を収めていた選手が普通の公立校に進学し競技を続けた場合と強豪校に進学した場合では実力に歴然の差が生まれることがあります。私の考えはこの差は経験値の差だと考えます。この経験値とは何かを理解していなければ強豪校に進学した場合にも先の例の実力以上の学校で底辺に埋もれる事と同じになる可能性があります。経験とは競争することです。強豪校には優秀な選手が多く競争する相手には事欠きません。もっと直接的な言い方をすれば「しのぎを削り合う」経験です。ここで間違った判断とは選手になるためには勝ち抜かないと選手になれません。そこで勝ち負けのみを意識するようになるとポテンシャル以上を自分に要求しペースを乱します。受験の例で言えば60のポテンシャルで56前後の実力の生徒が65の実力が必要な高校にたまたま入学出できたわけですから入学直後の実力試験で散々な結果になることもあるでしょう。その時に「
こんなもんだろう」や「これは当たり前のこと何故なら、今自分がいる場所は自分の実力の遙か上だ。通用する方が不思議だ」といった開き直りとも,余裕ともいえる心境は必要です。観なくてならないのは自分の順位ではなく間違えた所です。これが解ればやるべき事ことがはっきりします。しかし厄介なのは間違えた箇所する解らない。間違えた理由もわからないといったことです。しかしこの時が大きな分かれ道です。通用しないから100%駄目で自分の可能性は0%だと極端に×か○かで結論づけてしまうのではなく、実際通用するのが60%~70%近くあり、残りの40%~30%が通用しないとするならば、通用しない部分を補えば良いだけです。また少なく見積もっても60%は通用している。半分以上通用しているわけだから挽回は不可能ではないと考えるべきです。難しい所は後回にする。なぜなら今の自分の実力では理解できないからです。解る所から始め一つ一つ解る所を増やす。ポテンシャルに置き換える自分は1000円のポテンシャルしか持っていない。だから1200円のポテンシャルの難問は解らない。だったらポテンシャルを上げれば良い。解る所からコツコツと実行しポテンシャルを上げることのみに集中すれば良いだけのことではないでしょうか。この道を大きく分ける要素が「自己肯定感」です。
 陸上競技に戻します。私の感覚ですが陸上競技の場合は勉強と比べると自己肯定感を持ちやすいと思います。理由はライバル(敵)が見えているからです。勉強の場合でもライバルの存在は明らかですがどの様な勉強をしているか、家での勉強の仕方が見ているわけではありません。おのずと自分が自分の一番の敵になる傾向があります。陸上競技の場合ライバルの練習も実力も目に見えます。そこからの考え方は勉強と同じです。ライバルの実力に対し自分の実力は何%なのかを正確に判断し、足らない部分を補う方法を工夫し実行するだけです。一気に追いつこうとせずコツコツとポテンシャルを上げていく道筋を確実に行うことが大切です。ヒントはライバルがくれます。ライバルに出来て自分に出来ないことを探し理由を考えれば追いつく方法は見えて来るでしょう。この瞬間にライバルは敵ではなく「見本」「お手本」になります。ではポテンシャルを上げる為に必要なことを整理します。

①自己肯定感・・自分の実力を知り優れた相手(結果)と比較しない心
②良い手本・・・手本とは手の届かない存在ではない。いずれは追いつく目標と考える
③正しい方法・・目標に追いつくための正しい方法を選択し実行する能力
④正確に観る目・正確に観るのはライバルの動きだけでなく自分の動きと心の内側になります。

 この様な地道な作業が自分のポテンシャルを引き上げ後から実力がついてきます。私は実力がポテンシャルを超えることはないと思っていますが、時折ポテンシャルを超えた実力を目にすることがあります。この時は慎重に判断し、その後の練習を考える必要があります。それは実力以上の高校に入学した際と似た様な現象が起きる可能性があります。プレッシャーから体調を崩す、怪我が続く等の影響を考えなくてはなりません。自分のポテンシャル以上の動きをした事により体が壊れる(怪我や不調)が続く可能性も考えられます。思わぬ好結果に浮かれるだけでなく次を見据えて練習に臨んで欲しいと思います。

 

 後 記

 実力はポテンシャルを超えません。しかし、競技生活最後と決めた試合でポテンシャル以上の実力を発揮することが出来たら幸せですよね。シーズンの中でも一番の目標としている試合でそれが出来ても幸せです。これにはコツがあるように思っています。方法ではありません。コツです。
 優れた指導者の中には選手に魔法をかけて結果を出す指導者がいます。これを◎◎マジックなどと言われる事もありますがマジックですから種があります。これは選手のポテンシャルを正確に把握し選手や周囲が気づかないうちに選手のでポテンシャルを戦略的に上げタイミングを誤らないで結果に結びつけているだけです。あくまでもポテンシャル内で計算し尽くされて結果と考えて下さい。この様な場合でも実力がポテンシャルを越えたとは言えません。

 もし実力がポテンシャルを越えることが出来たとするならば「奇跡」と考えて下さい。人間には不可能です。では誰に出来るのでしょうか。答えは一つ神様です。だから方法ではなく「コツ」になるのですが、そのコツとは神様に好かれること。神様に好かれて依怙贔屓をしてもらうことです。そのためにどうすれば良いかを考えました。正しい考え方をすること。正しい行いをすること。それを自然に行うこと。そうすればどこかで神様は観ていてくれて依怙贔屓をしてくれます。だから「コツ」です。

 神様がいるこどうかはさて置きこんなポジティブな考え方をしていれば後押ししてくれる応援団が集まってくれます。この後押しが奇跡を起こしてくれるのかもしれません。