子育てのヒント
2024年02月01日

指導における余白

 「点での指導」とは指導者が選手に対し一歩通行の指導でると説明してきました。線の指導ではお互いの意志のやりとりがあります。これを解りやすい例で言えば「点の指導」で有れば~をやれ。となります。言葉を柔らかくしても~をしなさい。になります。「線の指導」の場合は~をしなさい。理由は~だから。君はどう思う。あるいはできるかといったやりとりが生まれます。ここからも独断と偏見ではありますが自分の考えている「余白」とは何かをお話為ます。選手とのこの様なやりとりの中で選手に考えて判断する機会を与えることを余白と私は定義づけます。理由は「点の指導」の場合はコンデションが悪くても「甘えている」などの理由で練習の質量を落とす事ができない時代がありました。酷い例になると怪我は練習で治せ等の無茶な時代も過去にはあったと思います。幸い私は現役時代にその様な指導は受けていませんがコンデションの不調を抱えて練習を続け2年間ほどリハビリの様な練習しか出来ない時代も経験しています。
 そこで余白とは指導者が選手に考え判断する余地を用意するという意味で考えて下さい。体調不良時の判断は勿論のこと練習の目的や方向性も選手に考え判断させます。そこで放任指導との違いですが「余白」の大きさは選手のポテンシャルによります。自立している選手とまだ自分で判断することが難しい幼児とでは余白の大きさは当然違います。本質からずれると思いますが解りやすい例を一つ紹介します。風邪を引いて熱が高い状態で注射を打たなければならない状況の幼児と生徒がいたと仮定して下さい。注射必要です。この場合の二人の余白はこの様になります。

1,幼児・・注射はしたくない。嫌だと抵抗する。
  右手にするか、左手にするか決めて良いよ・・注射をする→決定事項→注射をする手を自分の判断で決める

2,生徒(高校生~)・・注射はしたくない。嫌だと抵抗する。
  注射をするか、しないかは自分で決めて良い。しかしその後にどの様な状況になっても自己責任で解決して欲しい・・全ての判断を与え、責任を負わせる。

 この様になるのが望ましいと考えます。小さい子供でも判断の余地を残すことで嫌々ながら注射を受ける可能性は高まると考えます。ある程度自分で判断ができる様になれば判断と責任がセットになります。嫌ならやらなくても良いがその後については自己責任になる。ここでの判断は幼児の注射をする、しないではなく、注射をしなさいという要求を受け入れるか、要求を拒否し万が一の責任を負うかになります。大切なことは本人に考える余地を残し考える習慣をつくる事です。また、最善の方法を選択する道筋を学習、経験させると同時に選択を間違えた時の責任は自分にあることを認識させる事も大切な事だと思います。特に幼い子供が成長する過程で自由と責任をセットで考える習慣をつけさせる事が自立を促し意志決定の場面でも成功に近い判断ができる様に成長すると考えます。以下のURLで実例を幾つか載せています。

 https://bayside-club.com/blog/1336  https://bayside-club.com/blog/1355
 
 陸上競技の指導に戻ります。まず観なければならないものは子供のポテンシャルになります。どこまでの余白ならば対応できるポテンシャルがあるかを判断しなければなりません。この判断の基準には年齢だけでなく子供が生活している環境なども加味して観察する必要があります。そして選手(子供)の方向性も考慮します。方向性とは楽しく参加したい。体力をつけたい。試合で結果を出したいなど個人の求める結果がどの様なものかを指導者が把握し、最適な方法を選択、提供するという事です。指導者の判断が正確でなければ選手(子供)に過分な余白(負荷)を加えてリ、本人が考えるチャンスを潰す事にもなります。具体的な方法は選手(子供)のポテンシャルに合わせ選手(子供)の目標と目標を設定した目的を明確にさせます。その上で今の自分でもできること、少し練習すればできそうなグループ(①)と今の自分ではできない事(ポテンシャル不足で不可能)なグループ(②)に分けます。②のグループの項目ができる様にするためにはどうすれば良いかを考えさせます。

例 100m11秒4台の記録①→100m10秒台の記録で走る②
  (1)100mを50歩で走る①→100mを46歩で走る② (ストライドを伸ばす)
  (2)15mバウンディングジャンプ6,5歩かかる①→5歩でいける②(瞬発力強化)
  (3)80m過ぎるとフォームが乱れる①→80mから伸びるようになる②(筋持久力の強化とフォームの安定)

 上の例は今現在の実力が100m11秒4台の選手①が10秒台(10秒8,9)②の記録で走ると目標をたてたと仮定した例です

 目標 10秒台→目的・・県高校総体で決勝に残る。

 できている事を整理する(1)~(3)①段階の項目を選手と考える→②の段階に進むために必要なことを整理する(課題)
  ↓
 課題の決定 (1)100mの歩数を50歩から46歩にする
  ↓      (2)15mバウンディングジャンプを⒍5歩から5歩にする
  ↓      (3)80m以降の筋持久力を強化し同時にフォームを安定させる
    方法を決定(課題ができる様になる方法を考えさせる)→ヒント◎指導者は選手(子供)が課題を解決するためのヒントを与えると同時に一緒に課題解決に臨む

 この様な手順で子供の成長に指導者(大人)が関わって行く方法が「線の指導」であり自立から自律へと選手(子供)を成長させることができる最良のやり方と考えます。ただ、この方法の欠点はマンツーマンの指導では機能すると思いますがチームになった場合どうするかといった課題は残ります。国際試合を念頭においた大きな母体を持つ企業チームには複数の指導者がいるはずです。大学や強豪高校の場合も複数のコーチが指導にあたる例はあります。最近では地域のスポーツクラブでも複数のコーチをっゆしているクラブもあります。しかし普通の公立中学校、高校や私の様に個人で行っているクラブの場合は特定の選手だけでなく全体で指導をする時にはどうすれば良いかといった課題は残ると思います。それを解決する方法が「線で観て線で指導」するのではなく「面」で考える事です。.

   後 記

   陸上クラブを立ち上げクラブのサイトを作りSNS等で発信する必要性を感じてからPCのサポート、サイトのサポートを多用する様になりました。この時に感じる事は教え方が上手い人は多分私が解らない所、助けて欲しい事が解ったうえで指導してくれていると感じます。これは教育の分野でも仕事でも生徒や後輩を指導する時に活用できます。点の視点で点の指導をする指導者は「何故こんなこともできないんだ」という視点ですが、線の視点で線の指導をする指導者は「何故こんなことができないんだ」と考えます。違いは文章中の「も」か「が」の違いです。そこで点の指導の場合は終わってしまいますが線の指導の場合は「どうすればできるのか」が付加されます。ただ、この法則が当てはまらない物もあると感じる事があります。それが子育ての場面です。親子の関係は他人の関係と比べ深いですし断ち切る事が難しい関係です。したがって点の指導でも通用する場合もあれば、線の指導が状況を悪化させてしまうこともあります。その例が先程提示したブログの内容です。教育の現場と保育の現場を経験して思う事は大人の10年はあっという間ですが、子供は10年で大きく変わります。成長する場合もあれば、荒れてしまう場合もある。そうならない様に線の視点を子育てにも活用していきたいと思ったのがメソッドを作ろうと思った切っ掛けだと考えています。