その他
2024年03月06日

ウクライナとロシア

 東大入学式の祝辞で総長のスピーチが看過できない内容の様だ。具体的には東大入学式の祝辞でロシアのウクライナ侵攻に関してロシアだけが悪いわけではないといった内容のスピーチを総長がしたらしい。コロナがあり不安定な世情の中でのロシアのウクライナ侵攻を擁護する様な内容を祝辞として話すのはいかがなものかという意見を熱く語っていた。偶然耳に入ってきた雑談ですが興味深い内容に感じました。
 東大の入学式の祝辞は毎年ニュースなどにも取りあげられるほど興味深い内容のものが多くあります。近年では上野千鶴子氏によるスピーチを何度かテレビで見た記憶がありました。最初に感じた興味は何故入学式の祝辞にはふさわしくない内容を東大の総長はしたのか、その意図は何だったのかです。ロシアは国際法を無視しウクライナに侵攻しました。それに対して西側の諸国はロシアの侵攻に抗議の意志を示しています。武力によるロシアへの抵抗まではしていませんが経済的な方法でロシアへの抗議を形で示しています。その様な世界情勢の中で何故ロシアを擁護する様なスピーチをするのかには必ず意味があると考えました。前回話した視野という観点で考えると次の様な考え方になると予想しました。それを図で示したのが下の図です。

 

 上の図がスピーチ内容の予備知識我ない状態で総長が言いたかったであろう事柄を整理したものです。戦争である以上お互いの言い分はあります。但しこの言い分も私個人の私見によるものです、正しい言い分は本人(ゼレンスキー・プーチン)に聞かなければ判断はできませんが不可能です。また表向きの言い分(正義)に隠されたそれぞれの汚い部分(陰謀的な考え・思惑など)もあります。
    ロシアはナポレンから始まりヒトラーと何度も他国からの侵略を経験してきました。その事でトラウマ的な恐怖心はあるでしょう。第二次世界大戦後にはウクライナを含めヨーロッパ東部のロシアに近い地域はソ連に組み込まれます。この時にドイツは東西に分断されベルリンに壁が作られるます。ここから東西の冷戦が始まりますがゴルバチョフの提唱したペレストロイカの影響もあり壁は崩壊し東西の冷戦は終結した様には思えました。この時にソ連に併合されていた国々が独立をします。ウクライナもその一つです。ウクライナは世界屈指の穀物栽培地域で小麦の栽培が有名ですがソ連併合時のスターリンの政策で多くの犠牲者を出します。この政策をホロモドールと言いウクライナの人達にとって忘れがたい経験です。そしてクリミアの問題があります。ここの問題は複雑でソ連併合時にウクライナ東部にはロシア系住民が多くいました。このロシア系住民がロシア併合への機運が高まった時にウクライナは武力によって鎮圧しています。また、クリミア半島にはロシアにとって重要な港があります。セベストチェリはクリミア半島にある港ですが交易、軍事両面でロシアにとって重要な港です。ロシアは広大な領土を有しますが冬期には凍結してしまうために凍らない港が必要です。元々はロシアが統治していた港ですがフルチショフ二よってウクライナに返還されます。しかし当時はソ連併合下にあったウクライナであったために問題はないと判断されたのではないでしょうか。それが冷戦崩壊でウクライナが国として独立します。ロシアはセベストチェリを借款することで凍らない港を確保します。それがウクライナの西寄りの政策やNATO加盟のながれをロシアは許せなかったと思います。理由は港を失うことになるからです。そしてウクライナの東部にNATO軍やアメリカ軍が駐留することがあればロシアの立場では恐怖を感じることになるでしょう。
 世界の情勢は平和な日本で過ごしていると鈍感になることも多いと思いますが、それぞれの国にはそれぞれの正義があります。それぞれの正義の妥協点をみつけることが本当の正義となる。上の図でいえばA、Bの視野はそれぞれの国の正義のみを見ます。これを両方の正義を視野に入れた見方がCになります。真の正義とは「争うな」ですがこの正義に辿り着くためには双方の言い分があり、正義があります。その中で妥協点を探さなければなりません。その妥協点を探す行動こそが真の正義であり、そこで必要なことが自分の立場だけで判断することは危険である。この様なことを東大の総長は言いたかったのではないかと想像しました。

 そこで少し調べてみようと思いました。最初は好奇心からです。今はネットで検索すればある程度のことは解ります。そこで初めてこのスピーチを行ったのは2022年度の東大の入学式でのスピーチでスピーチをした人は映画監督の河瀬直美さんだと解りました。東大総長ではなく映画監督のスピーチです。河瀬監督の作品は幾つか見ています。独特の雰囲気を持っている監督でその土地の風土や習慣といったものにストーリーを入れた五感で感じることができる映像を作ります。台詞で説明することを極端に省きますが美しい映像と役者の表情や佇まいで物語を作ります。言い換えるならば「余白」が多い作品を手がける監督です。近々の作品では2020年(コロナで21年)開催の東京オリンピックの記録映画を手がけています。YouTubeにもその映像があったので見てみましたが私が上に書いた様なことではなく、もっと深いが近い所のことを言っているのかなという印象を受けました。只,内容は難解です。非常に危険なワードも出て来ます。その為かこのスピーチを非難する内容の動画がYouTube上にもあがっていました。中には河瀬監督を茶化すような表現や言動も散見しました。しかしこれこそ経験の放棄と同義なのではないかと感じます。
 河瀬監督のスピーチは祝辞という形をとった問題提起なのではないかと思います。非難の声の多くは問題提起であるが故の何を言いたいのかが解りづらい。これは河瀬監督が映画を作る時のやり方に似ています。無駄に感動的な台詞を多用せず情景と役者の表情で伝えようとします。そして最も危険なワードが「ロシアを悪者にして安心していないか」や「私たちも他国を侵略する危険をはらんでいる」というワードです。解りづらい、危険なワードが有るが故に非難を受けることになったのではないかと想像します。今風で言ってしまえば解りづらい内容と危険なワードのために炎上した。この様になると思います。しかしこの問題提起の中には自分のしっかりとした芯を持たなければならない。芯を持つとは自分の信じるところを持つことで、それは日常の中に隠れている。まずはそれを探そう。それを真実と言うが真実は世の中のねがれで変化する。私たちは常に自分をアップデートしていかなければ真実を見逃してしまい自分の可能性を潰してしまう。そうならないために今の自分に胡座をかいていないで自分と向かい合わなければならない。今、貴方はそれができていますか。この様な問題提起ではないかと思います。問題提起ですから答えは自分で探さなくてはなりません。東大の入学式での祝辞ということを考えると実に意味深い内容だと感じます。それは東大が求める人材が決められた答えを探す人間よりも何も無いところから新しい答えを作れる人材を望んでいるからです。河瀬監督の課題(問題提起)にどう自分の答えを作るかを考えなさい。この様にも思います。次回は河瀬監督のスピーチをもう少し深く考えてみます。そのためにあと3~5回は残っている映像を見る必要がありますね。

 後 記

 陸上クラブを立ち上げてやっと複数の子ども達で活動できる様になりました。小学校低学年と幼稚園児です。幼い子ども達なのでトラブルが絶えません。陸上競技は順位と記録を競うために優劣が明確です。それが原因でよくもめます。一般的には「仲良くやろう」なのでしょうが私はそう思いません。負けず嫌いが出ているのでしょうがないです。時には泣く子もいますがこれも通過点と考えます。仲良く表面上を安定させて安心してしまえば大人はよいでしょうが子供の成長にストップをかける事にもなります。大切なことは子供が成長し自律できるような道筋を考え戦略的に指導を行うことでしょう。もめるのは負けたくないから、それを仲良くやれと言えばめ負けたくない気持ちが間違った方向へ行く可能性もあります。だから今はい大いに揉めて下さい。そこから学習してくれれば良いと考えます。