子育てのヒント
2024年05月11日

プレッシャーを克服する方法

 子供の精神的ポテンシャルが好奇心から向上心に上がってから入る領域が「葛藤の域」です。子供はこのポジションでは安定せず葛藤の域と不安の域を何度も往復しながら集中の域へとアップデートするための技術を身につけます。この状態を前回提示したコンフォートゾーンを抜ける例でも説明できます。

 上の図がコンフォートゾーンです。コンフォートゾーンとはストレスがない安定した状態のことです。上の図では安心の領域になります。子供の精神的ポテンシャルは好奇心によって安心の領域から怖れの領域にアップデートされます。そして、この時の怖れの正体は「不安」だと考えます。成功のピラミッドにおいて不安が成功域にあるのはこのコンフォートゾーンの説でも証明できると思います。そして人が成長する為には、この怖れの領域は不可欠な要素です。この領域における怖れの正体(不安)を別の言葉に言い換えると「プレッシャー」と言い換えることができます。このプレッシャーも人が良いパフォーマンスを行ううえで必要な要素です。この様な言葉があります。「このチームには全く緊張感がない」この言葉で緊張感(プレッシャー)が無く伸び伸びと活動している良いチームの雰囲気と取る人はいません。しまりがなくダラダラとした様子を表した言葉です。このことから人はプレッシャー(緊張感)は良いパフォーマンスを行ううえで必要だと認識しています。しかし何故選手はプレッシャーの影響を受けパフォーマンスに失敗し実力を出し切れず終わるのでしょうか。今日はその対策の話です。

 このプレッシャーに対する対策を一言で言い表したのがロサンゼルスドジャース(当時エンゼルス)の大谷選手がWBC決勝前のミーティングで発した「今日だけは憧れるのを止めましょう」です。この言葉は自分たちが潜在的(無意識の領域)に自分たちよりも相手の方が優れているといった深層心理を変え、自分たちは挑戦者ではなく相手と対等の力を持っている存在に気付かなくてはならない。この様な事を気付かせるフックとなった言葉だと思います。本当の実力が拮抗している時に勝敗を左右する要因に相手に対する思い込みがあります。自分よりも相手が強い。この思い込みがプレッシャーとになり、自身の動きを堅く窮屈なものにします。これが自身の良いパフォーマンスを阻害している原因と気付かなくてはなりません。但し相手は自分達より弱いといった思い込みで失敗数するよりもはるかにましとです。この様な時には緊張感に欠ける状態になりパフォーマンスは最悪になるでしょう。
 話を戻します。不安の正体はプレッシャーです。プレッシャーを感じた時から怖れの領域と学びの領域を行ったり来たりします。成功のピラミッドでは不安と葛藤の行き来になります。この時に経験する成功も失敗も自身の知識として蓄積されます。この行為を「学ぶ」と考えます。しかしこの時に成功するよりも失敗する方が多いと思いますが失敗を多くするとは失敗する方法を経験値として自分のデータに取り込み、同じ失敗を回避することができるようになると考えます。そのため成功を求めるためには失敗は必要な要素となりますが、あくまでも選手(子供が)が怖れの領域と学びの領域を行ったり来たりしている状況の時にのみ有効と考えて下さい。子供(選手)が安心の領域では失敗は自分をアップデートする事を躊躇させる材料にしかなりません。指導者がこのポイントを間違えると選手(子供は)安心の領域から出ることを拒むようになります。子供の武器である好奇心が使えなくなるので注意すべきポイントと思います。
 具体的にどうすれば好い結果に結びつけられるかを考えます。向上心とは自分を高めようとする気持ちです。この時に強い他の選手や強豪のチームに勝つことを目標として掲げる事が多くあると思います。何故かと言えば解りやすい、決めやすいか目標だからです。◎◎に勝つ。この様に目標を立てても相手も自分と同じスピードで進化していれば追いつきません。そしてこのままでは失敗しか残らないと思います。これは同じスピードでお互いが進化していると仮定した場合です。ではどうするか。それは自分の進化のスピードを相手のスピードよりも速くすれば良いだけです。そこで自分を分析する事が大切になります。例えば100mのレースだけを考えても(1)スタートの技術(2)加速の技術(3)中間走の技術(4)減速させない技術(5)フィニッシュの技術と分けて考える事ができます。この中で相手に勝っている項目。負けている項目を整理し、勝っている項目をさらに強くするか、負けている項目を強化するか、両方同時に行うかの方針を決めます。これを戦略と言います。ここで注意する事は一つを強化したために今まで良かった項目をーにしてはいけないということです。そして相手に勝つまで(目標達成)の期限を決めます。当然目標が記録であっても良いでしょう。そこで今少し頑張れば修正できることを積み上げて目標に一歩ずつ近づけます。目標が大きくプレッシャーを感じ、そのプレッシャーに潰されそうな時にはこの様な作業を繰り返して下さい。高い目標を作った時には大きな目標を期間ごとに分解しその目標をさらに細分化します。そして今日やるべき事を整理しましょう。今日やるべき事は今日やれる事です。そして地道に確実に昨日より1段だけ目標に向け階段を上がって下さい。昨日よりも15cm高く上がって自分を確認して下さい。この繰り返しで上手く行かなったこと(失敗したこと)は経験として自分自身の知識にストックします。この行動がで今までは怖れ(不安)だったはずのプレッシャーが、期待(ワクワク)に変化します。協議中に選手はこの変化に気がつくことはありませんが挑戦が終わった時に以前には無かった余韻が残ります。これが達成感です。達成感を感じたときに自分のプレッシャーが自分のパフォーマンスを呼応上させるために必要な物だと感じ始めるでしょう。そして、この時に向上心は学びの領域に定着したと言えるでしょう。
 今までスタートラインに立った時に自分よりも強い相手に負ける。この様な不安が悪いプレッシャーとしてパフォーマンスの邪魔をしてきました。学びの領域に定着した時のプレッシャーは自分よりも強い相手に対し自分の何が通用するのか、何が足らないか、そこで自分が明日からやるべき課題を決定する場になります。課題を探し、行う事でライバルとの差は縮みます。ワクワクしませんか。この様な精神的ポテンシャルを身につければ1日15cmだった階段が30cmになります。ライバルとの差は確実に詰まり出します。

 

 後 記

 夏休みの宿題が終わらない。刻一刻と始業の日が近づいて来る。この時にプレッシャーを感じると思います。そこで間に合わせるべく今までためていた宿題に手付け出す。夏休みの宿題とは難しい頭を使う様な物ではなく地道にやっていれば終わるものだった記憶があります。手を付けると10/100程が終わりました。100に対し0か10かの大した違いはありません。ただ宿題に手を付けた瞬間からプレッシャーは消えていた経験はありませんか。プレッシャーがパフォーマンスに悪い影響を与えるのは原因が不安だからです。この不安が期待に変わった時のプレッシャーは良いパフォーマンスに絶対に必要です。不安と期待の境界線は何かと言えば、行動しているか、行動していないかです。最初は闇雲に始めた行動かもしれません。しかし行動する事で身につけた知識を使い成功するために道筋を考えるようになると知識が知恵に進化します。知識とは決まった100の答えから正解を探し100点を目指す事ですが、知恵とは何もない0から100の答えを作り出すことです。この時、自身の内面に地図とコンパスを持つようになるでしょう。これがあれば迷うことなく進む事ができます。ここからが学びの領域が始まります。