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2024年05月22日

課題を残し選手を褒める・・課題の点数化について

 人は褒めて育てた方が成長するのか、それとも厳しく育てた方が成長するのかという話題に私見を交えての提言をします。そこで下の動画を見て下さい。

 この動画はスプリント能力を高まるドリルの一つです。修正すべき点はありますがほぼドリルの目的を達成するたに必要な動きはできています。動画は小学校3年生の女子選手です。先ず動きについてですが小学生特有のふざけている様な動きではありません。小学生は基本練習は嫌います。楽しくない。やっている意味がわからない。この様な理由から基本的な練習では集中できません。だから小学生にこの様な練習をさせると集中力を欠いたふざけた様に映る練習になります。それは小学生がふざけて練習をしているのではなく練習の目的が理解できないからです。例えば仕事でも意味が解らずやらされている時は本気になれません。動画に戻りますが、私がこの練習の中で一番良いと感じた瞬間は青のコーンにドリルからダッシュの動きに切り替える時にスムーズに切り替えることができている。そしてダッシュもゴールまで手を抜かず走りきっている点です。そしてもう一つの動画を見て下さい。

 この練習の目的はオレンジのコーンで一段走りのギアを上げることで100m走における走り方の切り替えを覚えることです。この動画においてもその動作がほぼできていると思います。では,この選手は自身の練習の目的を理解しているのでしょうか。理解しています。理解できなければ小学生がこの様な練習をするのは不可能だと思います。但し、目的を解りやすい形に置き換えて理解していると考えて下さい。

 少し話が横道にそれるのですが以前10年ほど認可外保育園を経営していました。消費税増税のスケープゴート的な扱いを受けた保育料の無償化にコロナの流行とダブルパンチがあり2021年3月31日を以て閉園しました。この時に子供は怖い物知らずで無敵な存在だと感じました。また自分の本能もまま動きます。危なっかしい場面の多いのですが、その分自分を高めたいという気持ちも強いです。そこで子ども達には難しい理屈で説名するのではなく,今の自分の状態を正確に理解でき、その状態を少しでも良くしたいと考えることを子供の目的と置き換えたほうが効果的です。そこで具体的な方法が次の様になります。

 では、1個目の動画ですがこの時の点数は97点です。この動画の前の状態は85点です。最初の頃は私が点数を提示していましたが、今は子ども達が自己点数を付けることができます。そこで、85点になった理由を子どもと一緒に考え改善する道筋を考えます。これが次の課題になります。そして、子ども達はもっと良い点数にするためにの行動をする様になります。
 以下は選手本人の自己評価になります。85点の理由は足を交差する動きの段階で動きが緩慢だあっとこと。青のコーンで動きを変えられなかったこと。最後まで全力でなかった事です。そこが改善されて動きが上の動画になります。本人の点数は95点くらいだったでしょうか。私の評価は97点です。選手本人が上げた課題は全て改善されていたので100%の成功です。97点の理由はまだ伸びしろがあるからです。当然結果が良くなったので評価(褒める)します。しかし褒め方を間違えると選手の可能性を伸ばせない事があります。もっと貴方は速くなれるという意味の97点になります。では、パフォーマンス点数化の手順について説明しましょう。

①基準を決める・・・1本目のできを基準として点数を決める→85点
②減点理由を決める・100点取るためには何ができてないかを具体的に判断する
③改善策を決める・・具体的に1本目と変える項目を決める→改善点を明確にする
④自己評価する・・・改善点が改善できたかを自校評価する
⑤するあわせをする・選手本人とコーチの摺り合わせ行い評価の正確性を高める
⑥全体の評価をする・例えば5本行った場合に何本目が一番良かったかを聞き点数化する
 
 この様な手順で点数化します。この点数化には指導者の視点と選手の視点は違う様に思いますが結果的に同じものを求めていることになれば選手に分かり易い基準を提示することは大切だと考えます。指導者はパフォーマンスを向上させる事を目的とし、選手は100点を出すことを目的とします。結果的に両者の目的が近づき選手のパフォーマンスは向上します。

 では本題に戻ります。この様に結果が出た時には当然選手は褒めて実力を伸ばすことが効果的です。但し結果だけをを褒めてしまうと選手は今以上に自身のパフォーマンスを高めるモチベーションを持たなくなる場合もあります。また褒められることが目的になってしまえばパフォーマンスを高める課題を見つけようとする攻めの姿勢が守りの姿勢に退化する危険性があります。褒めると同時に課題を残すことが年少の選手の可能性を引き出す最良の考え方と思います。

 後  記

 課題を点数化することは1月から始めたモニターの中で偶然生まれたやり方です。子供は競争が好きです。だから競走の要素が多い方が意欲的です。しかし競走ばかりしていると必ず優劣がつき順位が確定してしまいます。このことで競走することに恐怖心に似た感情が芽生えることがあります。そこで他との競走ではなく自分との競走といった観点で指導する方向に変えて行きましたがあまり効果が期待できない時期が続きました。偶然ですが良いタイムが出た時と、タイムが出なかった時を点数に置き換えたところ良い反応が返ってきたのでこの方法は効果的と感じ以降は全て点数化する様にしています。最初は単なる記録でしたが今では動画にあるような基本的なドリルも点数化できます。一番大きな効果は選手個々が自分の基準を持ち評価できるようになった事だと考えます。